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「従来の収支モデルは通用しない」。
コロナ禍で浮き彫りになった飲食店経営の課題
コロナ禍のデリバリー市場において業績を伸ばす株式会社Globridge 大塚社長のコラム【連載コラム第1回】 2021年12月28日 カテゴリ:コラム
インタビュー:株式会社 Globridge 代表取締役 大塚 誠氏
緊急事態宣言が解除された今年10月以降、飲食店の時短営業や人数制限などさまざまな規制が緩和されていますが、客足はコロナ前と比べて完全に戻っているわけではありません。現在の飲食業界では何が課題とされ、これからどのような変化が予測されるのでしょうか?
今回は、コロナ禍のデリバリー市場において業績を伸ばす株式会社Globridge(グロブリッジ)の代表取締役・大塚誠氏に、飲食業界の動向について聞きました。
コロナ禍で浮き彫りになった飲食店経営の課題から、急成長するデリバリー市場の動向、これからの日本の飲食店経営、デリバリー市場の最新テクノロジーなどについて、5回連載でお届けします。
コロナ禍で崩壊した、飲食店の“儲かる方程式”
チーズ専門店や肉バルなど多彩な業態の飲食店を運営するほか、飲食店のコンサルティング事業も手がける株式会社Globridge。コロナ禍で「新たなビジネスモデルへシフトチェンジしていくことが重要」という同社代表取締役・大塚氏の考えから、オンラインデリバリーサービスの運営にも乗り出しました。
新型コロナウイルスの感染拡大によって移動が制限され、消費者のライフスタイルが大き く変化したことで、「飲食店の“儲かる方程式”が崩壊した」と大塚氏は指摘します
これまでの飲食店では売り上げに対して、食材原価(=Food)と人件費(=Lavor)を合わせたFLコストが60~65%、家賃が10~15%、その他の水道光熱費や通信費といったコストが10~20%を占め、利益は残りの約10%というのがスタンダードモデル。出店場所は繁華街の路面など、店頭通行量が多い立地が好まれていました。店頭通行量が売り上げにつながり、利益を生み出すことができるので、家賃など固定費にお金をかけても利益を生み出せるという構造です。
ところが、コロナ禍で店頭通行量が減少したエリアでは集客が難しくなり、固定費がかさむ一方で利益を生み出せなくなりました。これまで好立地とされ、高い家賃に見合う売り上げが見込まれていた物件は、価値を見出さなくなったのです。
「アフターコロナにおける飲食業界の売り上げは100%コロナ前に戻ることはなく、70%程度になるだろうと試算しています。そして70%の売上に従来の収支モデルを当てはめると、利益率はマイナス17%となり赤字に転落することになります」
大塚氏はこのように話します。コロナ禍で露呈したのは、店頭通行量に売り上げを依存してきた飲食業界のビジネスモデルが、いかに脆弱だったかということでした。
技術開発で差別化を図り、商品でお客を呼ぶ
これまで店頭通行量の多い立地へ出店が集中していたのは、「商品力で集客する」ということができていなかった証拠でもあります。というのも、飲食は“モノマネ”ができてしまう業界。特に日本の料理人はレベルが高く、他店で食べた料理の味や見た目を再現することは難しくありません。そのため、自店の近くに似たようなコンセプトで似たようなメニューを提供する店ができたとき、その店の方が好立地だったり、価格が少しリーズナブルだったりすると、そちらにお客が流れてしまう傾向にありました。
模倣が可能でオリジナリティを出すことが難しく、商品力で集客できないことも、飲食業界の課題となっていたのです。
「料理の見た目や味はもちろん、店舗の内装もマネすることができてしまいます。他ではマネできないオリジナリティを生み出すには、食材を独自のルートで仕入れたり、栽培の段階から生産者とつながったりすることが一つの手。そして最大の解決法は、技術を伴った商品開発ですね」
最近では、冷凍・解凍する際に細胞の損傷を抑え、ドリップを出さずに味を保てるような技術開発が進んでいます。その他、揚げ物の分野では、いつまでも揚げたての食感を保てる技術開発なども。
「例えば中華のあんかけなら、30分後に食べてもとろみがあるあんかけを開発できたら、他店でも見た目は似せて作ることができても、技術をマネすることはできないんですよね」
こうした技術開発を進め商品にうまく活用できると、オリジナリティが生まれます。そうすると他では味わえない商品となり、お客を呼ぶことができるのです。
自立したネット集客ができるブランドは強い
今後、店頭通行量に頼らないでビジネスモデルを構築するためには、いかにネットを活用して集客するかがポイントになります。
「『ここにこんな店がある』と多くの人に認知してもらい、記憶にとどめてもらう。そして初来店という行動を起こしてもらい、ハマってリピーターになってもらうという一連の流れが、集客において重要です。コロナ前は、店の前を通行する人に店舗を認知してもらうことが集客の最善な方法でした。店頭通行量に頼らないで売上を上げることが課題となっている今、違う方法で認知度を上げる必要があり、その方法の一つがネットなんです」
飲食店のネット集客と言えばグルメサイトをイメージし、実際に利用している飲食店も多いのが現状です。しかし、大塚氏はこれを「グルメサイト頼みで自立したネット集客ができていない」と、課題として捉えています。
「強いブランドというのは、専用のホームページを持っていて、独自に情報を発信しています。それによって人を集め、ファンを作ることができるんですよね。このように自立したネット集客は、飲食業界がまだまだ弱いところ。今後の課題ですね」
人口減少時代にどのような戦略をとるべきか
アフターコロナに向けて新たなビジネスモデルへシフトチェンジしていくには、日本が人口減少時代であるということを念頭に置き、戦略を考える必要があります。
一般的な人の食事回数は、単純計算すると1人あたり1日3食、間食も入れるなら4食。
飲食のマーケットは、4食×人口ということになります。人口減少時代において、このマーケットは縮小するように考えられますが、実は横ばいになっているのが現状。こうした状況について大塚氏は次のように解説します。
「飲食市場は、ここ最近で単価が上がっているのはもちろんですが、外食頻度も上がってきています。これまで1日4食のうち、4食とも外食していたのかというと、そうではないと思います。1週間に換算すると、食事の回数は4回×7日間で28回ありますよね。仮に1人あたり28分の3で外食していたのが、28分の5になったら、人口減少時代でもマーケットが伸びる論理になります。私たちが着目するべきは、28回のうち今まで取れていなかった食事であり、または同じ3回であってもどれだけ単価を上げられるかということです」
ここで、外食の新たな可能性を広げているのがデリバリーです。これまで家でカップラーメンを食べていた層や、コンビニ弁当を食べていた層をデリバリーへと取り込むことで、外食頻度の向上につながったのです。
デリバリーは急成長している市場だからこそ、多くの課題も指摘されています。人口減少時代で働き手が不足しているのはもちろん、食材費が高騰する一方で値上げに踏み切れないケースも。しかし、「課題があるということは、産業として伸びるということ。」と大塚氏。人手不足への対策とコスト削減に向けて、生産性を上げる技術開発が進んでいくと、より市場の成長が期待できるはずです。
次回は、コロナ禍で急拡大したデリバリー市場について迫ります。
株式会社 Globridge
代表取締役 大塚 誠氏
飲食業界のDX化を志し2008年にグロブリッジを起業。
2021年から デリバリープラットフォームを開発に着手し、スピード展開を実現している。
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