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ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡あまね氏ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡あまね氏

2022年1月27日 専門家インタビュー

ITツール/デジタルツールで中堅・中小企業はどう変わった? デジタルワークの進展具合を解説

【第2回】ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡あまね氏に聞く! コロナ禍の中小企業の現状と未来

インタビュー:あまねキャリア 代表取締役CEO 沢渡 あまね 氏

前回の第1回では、テレワークの4つの段階、そしてその中でもっとも進んだ「テレワーク2.0」へと移行するためにはどのようなことが必要か、についてお話いただくとともに、移行に成功した企業をご紹介いただきました。

第2回となる今回は、ITツール/デジタルツールの導入により、中堅・中小企業の業務がどう変わったのか、デジタルワークはどこまで進んでいるのかについて具体的にお聞きします。


ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡あまね氏
ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡あまね氏

コロナ禍は意識の変化をもたらした

―――コロナ前後で中堅・中小企業の働き方は変わったのでしょうか?

間違いなく変化はあったと思います。第1回でも申し上げたとおり、環境や社員のスキル向上などに投資して成果を上げている企業は間違いなくあります。また、そこまで至っていなくても、「このままで良いのだろうか」という自問自答を含めた問いかけを通じ、意識の変化が起こり始めている企業は多いと感じています。

もちろんこれだけテレワークの普及やデジタルワーク化が叫ばれている中でも「うちには関係ない」という企業もありますが、それでも「当社は事情があって変化できない」「変化したいが変化できない」「当社はあえて変化しない道を選ぶ」など、少なくともこれまでの「横並びで変化を拒絶する」という姿勢からは間違いなく変化はあったと思っています。これは大きな進歩ではないでしょうか。

コロナ禍での働き方のイメージ
コロナ禍での働き方のイメージ

もっとも重要なツールは「ビジネスチャット」

―――中堅・中小企業においても、デジタルワーク化は必要なのでしょうか。

前回もお話ししましたが、デジタルワークのもっとも大きな利点は、「容易に境界を越えられること」です。そして境界を越える、つまり越境して成果を出すために必要なスキルは言語化能力だと考えています。必ずしも対面しているとは限らない、場合によっては所属先も働く環境も違う相手と、どのように信頼関係を構築し、筋肉質なコミュニケーションを実現するか。これまでの阿吽(あうん)の呼吸、喫煙場での雑談、飲みニュケーションなどは通用しません。特に初対面がインターネットであったりする場合のコミュニケーションにおいては、言語化能力のなかでも特にテキストベースのものの比重が増していることは明白です。

そこでデジタルワーク化に際して私が一番に推すツールが「ビジネスチャット」です。 こう言うと「従来のEメールで十分ではないか」と感じる方もいらっしゃると思いますが、Eメールはしょせん手紙の電子化にすぎません。宛先を役職順に入力し、「いつもお世話になっております」から始めるのでは、スピーディーでテンポの良いコミュニケーションは不可能です。また、メールは属人化しやすい点も問題です。Eメールは基本的には個人のメールボックスに蓄積されるため、たとえば異動や退職などがあった場合、引継ぎには関連メールを抽出して関係者に転送するという手間が発生します。その際、メールの転送漏れや不必要なメールを大量に転送するという事態も起こり得ます。また、PCが故障した際にはすべての情報が消えてしまう危険性もあります。

その点、ビジネスチャットでは、熱量の高いうちに意思決定をして行動を起こすことができます。また、仕事単位でチャンネルを切ってそこに情報を残すようにしておけば、新たに加わったメンバーも過去に遡って情報を見ることができます。新人が加入したときに着任を促進させることを「オンボーディング」と呼びますが、新入社員や転職者、派遣社員が新たに配属された、というような場合、最初の1週間はビジネスチャットを眺めるよう指示するだけでもキャッチアップが容易になることでしょう。

私はまずはメールをビジネスチャットに変えていくべきだと思います。

テレワークの男性がビジネスチャットを実施中
テレワークの男性がビジネスチャットを実施中

デジタルワーク7つの神器

―――ほかにもデジタルワークに役に立つITツール/デジタルツールをご紹介いただけますか。

私は全社員が共通して行う勤怠管理、スケジュール調整、ミーティングなどの間接業務を行う際、オープンなコミュニケーションを実現するツールを「7つの神器」に分類しています(表1)。

表1 デジタルワーク7つの神器

ITツール/デジタルツール 従来のソリューション
(1) ビジネスチャット メール、FAX、電話、対面
(2) オンラインミーティングツール 対面会議、対面商談、対面講義
(3) グループウェア 対面での通達、メール・FAX・紙・電話・対面での日程調整や施設予約
(4) オンラインストレージ/ドキュメント共有 メール添付ファイル送付、PPAP、ファイルサーバでのデータ共有
(5) ワークフローシステム 紙ベースの稟議、口頭決裁
(6) タスク管理/チケット管理 紙やホワイトボードのみのタスク管理、進捗管理
(7) ダッシュボード 紙資料、口頭ベースでの事業進捗報告・共有

表ではおおむね言語化依存度が高い順、利用人口が多い順に上位となっています。

(1) については先ほどお話ししました。
(2) オンラインミーティングツールについては、もはや必須といえるでしょう。対面でのミーティングとオンラインミーティングとは必要に応じて使い分けるべきですが、すべて対面ですとお互いの時間を奪う結果となります。移動の時間や素早い意思決定を考えるとオンラインミーティングに慣れる必要があるでしょう。

オンラインミーティングのピクトグラム

(3) グループウェア は、ビジネスチャットやオンラインミーティングでは実現できない、労務管理規定など組織共通ルールの周知、スケジュール管理、設備予約、文書管理などに利用します。横断的な検索エンジンなどを備えたソリューションであればより有益でしょう。

プロジェクト管理のピクトグラム

(4) オンラインストレージ/ドキュメント共有 も情報共有の手段です。いわゆる『PPAP』は大手IT企業を筆頭に廃止されつつあります。その代替手段として必要となります。

  • PPAP =Password付きzipファイルを送ります、Passwordを送ります、Angoka(あんごうか、暗号化)します、というProtocol(手順)。メールでパスワード付きzip形式の添付ファイルとパスワードとを別送する方式のこと。

運用管理のピクトグラム

(5) ワークフローシステム は特に中堅・中小企業にとって重要です。社長に権限が一極集中している場合や、権限規定があいまいで複数の役職者の決済を得なければならない場合などでは、テレワークを実施していても該当の役職者の押印を得るために出社したり、素早い意思決定ができないというデメリットが生じかねません。どこにいてもスマートフォンなどで決済を行える仕組みが必要です。

電子署名のピクトグラム

(6) タスク管理/チケット管理 は、テレワーク時の社員の不安や迷子問題を解決するツールです。離れた場所で業務に従事していると、進捗が分からなくて不安になることがあります。タスクの進捗状況をオンラインで視覚化できれば、それを見ただけでお互いの進捗がわかります。上司が部下に事細かに報告を求めなくてもすむようになります。

リモートワークのピクトグラム

(7) ダッシュボード は、たとえばKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)に対する売上進捗や原価率などをグラフィカルに表示し、経営層の意思決定を支援するツールです。

開発環境のピクトグラム

これらのほか、コミュニケーションのストレスを軽減するヘッドセットやオンラインミーティング用システムなどのハードウェアもデジタルワークを快適にします。

アイデア出しに最適な「#ダム際ワーキング」

―――ご自身もデジタルワーク、ワーケーションの先駆けともいえるダム近傍での業務、「#ダム際ワーキング」を実践されていらっしゃいます。その効果について教えてください。

まずはじめに申し上げたいのは、ダム際で遊んでいると思われては非常に悔しいということですね(笑)。実際にダム際で顧問契約を結んだり、各界の重要人物の方と集まって対談したり、さまざまなコラボやイノベーションが生まれています。現在、複数の自治体からもダムを活用したワーケーションプランやワーケーションスポットを作りたいとご相談を受けています。

効果について一言でいえば、「固定化された景色ではイノベーションは生まれない」ということです。私はサラリーマン時代の2009年くらいからテレワーク制度を利用して山中でシステムテストのシナリオを考えるなどアイデア出しをしていました。#ダム際ワーキングの利点は、やはり仕事に集中できる環境を得られる点です。ダムのそばは電波が入りにくいところも多いですから、電話に邪魔をされることもありません。また、ハイキングコースがあったり、ダムの天端(てんば、頂上部)を歩けるところもあり、気分転換にも事欠きませんし、運動不足解消にもなります。現在、総務部門のキーワードである「健康経営」にもつながりますね。

ワーケーションというと観光地やリゾート地で仕事をすることを思い浮かべることが多いと思いますが、そういう土地では意外に気が散ることも多いです。その点、ダムにはダム以外に何もありません。10分もいると景色に飽き、「さあ仕事でもするか」となりやすい。普段とは違う景色に置かれると、人間は新たな発想が浮かびやすくなり、イノベーションが生まれやすい。自ずとペーパーレス化も進みます。

管理部門の方こそ、ぜひ一度ダム際ワーキングを体験していただき、いままでの当たり前の間接業務や事務作業がいかに場所にとらわれない働き方を阻害しているかを体感いただきたいですね。

ダム際ワーキング実践中の沢渡あまね氏
ダム際ワーキング実践中の沢渡あまね氏

今回は、コロナ禍によって中堅・中小企業の業務はどのように変わったか、また業務変革にはどのようなITツール/デジタルツールが必要であったかについて解説していただくとともに、ご自身のデジタルワーク、リモートワークについてもご紹介いただきました。

最終回となる次回第3回では、中堅・中小企業におけるデジタルワークの今後についてお話しいただきます。

沢渡 あまね

作家/ワークスタイル&組織開発専門家。
あまねキャリア 代表取締役CEO/なないろのはな顧問・浜松ワークスタイルLab所長/NOKIOOアドバイザー/エイトレッド フェロー。
浜松/東京二重生活。経験職種 IT x 広報で組織の景色を変える支援をしている。これまで350以上の組織の改善・改革を支援。
著書『バリューサイクル・マネジメント』『どこでも成果を出す技術』(技術評論社)ほか。

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