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繁盛し続ける出店・店舗展開のコツ

ラーメン業界に学ぶ!

2020年06月09日 カテゴリ:コラム

執筆者:株式会社繁盛塾 木村 康宏

この10年くらいで、急速に店舗展開に成功するラーメン店が多くなりました。私がこの仕事を始める前も複数の多店舗チェーンがありましたが、それらのチェーンの中に新興勢力ともいえる新しいチェーンが食い込んでいくという構図になってきています。

以前のラーメンチェーンとの違いは、以前は1社につき1つの業態を展開する“一企業一業態”が中心だったのに対して、最近のラーメンチェーンは“一企業・複数業態”が中心になったことです。たとえば2018年に上場した「横浜家系ラーメン」と呼ばれる豚骨醤油ラーメンを中心に展開する株式会社ギフトは、横浜家系ラーメンでも様々な屋号を展開し、立地に合わせてメニューを変えたり、主力のラーメンのテイストを変えたりと、複数の次元で様々なカスタマイズをしています。世の中に大きなインパクトを与えた大人気つけ麺店「六厘舎」を擁する株式会社松富士食品もつけ麺業態「舎厘」をオープン。店舗展開の多くは「六厘舎」ではなく「舎厘」を中心とするなど立地環境に応じて業態を使い分けています。

ここ最近、店舗展開に成功しているラーメン店の戦略を学ぶことで、他の飲食店でも出店戦略の可能性が拡大すると思い、今回は出店・店舗展開の秘伝をお伝えしたいと思います。

ラーメン屋
 

あらゆる事業モデルは「必要商圏人口」を満たす必要がある

以前、ある大手アパレルチェーンの出店担当者と話をしたとき、「うちは商圏人口が20万人はいないと出店しません」と言っていました。あるコーヒーチェーンの出店担当者は「うちは商圏人口7万人が出店の目安です」と言っていました。

実は店を展開するにおいて、この「商圏人口」というものが1店舗ごとにどれだけ必要か?それを知ることが店舗展開の大前提となります。なぜならば、その条件を満たしているかどうかで繁盛するかどうかが決まってしまうからです。

例えば、コンビニエンスストアであれば1万人の商圏人口が必要とされています(小型店の場合は4,000人)。つまり、これ以上の店舗数になると飽和状態となり、全店が仲良く不振店となるか、勝ち組の店舗が出る一方で負け組の店舗が出るかという状態が起こります。前述の一般的なコーヒー店の場合は1店舗あたり7万人の商圏人口が必要とされ、ファミレスやファーストフード店なども同様に1店舗あたり7万人の商圏人口が必要となります。これは「クリスタラー理論」という理論に基づく考え方です。

そして、その人口の中において、第3回の「コンセプト」の回でお伝えした「ターゲットとなる客層がどれだけいるか?」が大切となります。

まず、無理な値下げを求めない。自分が卸酒屋で働いていたときに散々値切られたので、自分が買うときには値切らないと決めていました。そもそも、店に食べに来た客が「もっと安くしてくれ」といっても普通は応じないでしょう。それなのに、自分が同じことをお願いするのはおかしい。もうひとつは、金払いを良くする。例えば、1月末〆の請求書が2月2日に来たとしたら、その足で支払いに行きます。商売人は、支払いを先延ばししがちですが、それはしない。

その立地で一番になれる商品と業態を持っているか?

私が船井総合研究所でお世話になっていた頃、創業者の舩井幸雄先生からは出店について、何度も「出店を成功させるには、その商品・業態で一番になれる立地に出店するか、その立地で一番になれる商品・業態を開発するかのどちらかしかない」と言われ続けてきました。その教えを守り続け、やりきり続けたことで多くの繁盛店を作ることができたと自負していますし、きっとこれからもそうだと確信しています。

ただ客層といっても「商品」については、特別なフィルターがかかります。それは「その人の幼少期から慣れ親しんだ味に沿っているかどうか」というフィルターです。ラーメンの場合、特に醤油ラーメンや味噌ラーメンという「家庭レベルで日常的に味わっている味」を応用した商品の場合、「この醤油がどうも合わない」「この味噌が好きになれない」ということが起こります。実はラーメン業界では、関ヶ原を挟んで東のラーメン店が西に侵攻しようとした場合、または西のラーメン店が東に侵攻しようとした場合、いずれもうまくいかないという説がありました。そしてそのようなケースを多数見てきたのです。

1つの味で展開をするか、複数の味で展開するか

結果として、店舗展開の方法は必然的に複数の選択肢に分かれました。

  • 【1】地域によって味を調整して合わせる
  • 【2】「慣れ親しんだ味が違う地域」には出店しない
  • 【3】複数のブランドや業態を持つ
  • 【4】そもそも最初から「慣れ親しみのない商品」で業態設計をする

【1】と【3】は複数の業態を作って管理するという「管理コスト」が大きくなるため、本部の負荷が大きく大手チェーンの仲間入りが難しくなるリスクがあります。②についてはローカルチェーンとして成立しやすいですが、企業としての伸びしろが限定的になるリスクがあります。結果として④を選択して多店舗チェーン化したケースが多く見られます。それはハンバーグやパスタ、串カツ、もしくは生食パンなどがそれに該当します。

ラーメン屋店主
 

このように全国チェーンを作るのか、地域に愛される地域一番店を作るのか、はたまた海外を視野に入れた業態設計をするのか。そのゴールの設定が明確であることが大切で、それによってあなたの会社がとるべき最適な戦略は必然的に決まるのです。最短距離で最大の成果を上げること。これを皆さんが実現していくことで、日本の飲食が活性化して世界をリードする存在となり、結果として飲食業が日本のGDPを引き上げる存在になると私は思っていますし、願ってやみません。

株式会社繁盛塾 代表取締役社長 代表コンサルタント 木村 康宏氏

株式会社繁盛塾
代表取締役社長 代表コンサルタント 木村 康宏氏

学習院大学経済学部卒。経営コンサルティング大手の(株)船井総合研究所にてラーメン業界のコンサルティングを立ち上げ、チーフコンサルタントなどを歴任。2010年、ラーメン業界専門のコンサルティング会社として(株)繁盛塾を設立。19年間にわたりラーメン店を専門とし活動を続けてきた、経営・繁盛店づくりの スペシャリスト。日本全国各地の店を支援し、その顧客の多くが地域を代表する繁盛店になり、上場を達成した会社も多数。これまで経営に携わったラーメン店は550社2,800店舗以上。業績アップ成功率は95%以上と圧倒的な実績を誇る。

専門書「日本の専門コンサルタント50」(日本コンサルティング推進機構)において、 日本の専門コンサルタント50人の中の1人として紹介されたほか、ソフトバンクグループ孫正義社長の後継経営者養成選抜組織である「ソフトバンクアカデミア」 3.5期生(選抜枠)として突破率1%の中で選抜されるなど、業界を代表する実力派。著書に「1日300人が行列する人気ラーメン店のつくり方」(同文舘出版)「ラーメン 屋の看板娘が経営コンサルタントと手を組んだら」(幻冬舎)がある。

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