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人材不足と離職率を改善するための対策
「月刊飲食店経営」の編集長が語る! 外食業界コラム2018年12月06日 カテゴリ:コラム
執筆者:月刊飲食店経営 毛利 英昭
外食業界に限らず人手不足、採用難は、深刻化している。「少し待てば改善するのでは・・・」と考える経営者もいるようだが、人口の構造的な問題だけに、自然に解消するという問題では無い。少子高齢化に伴い日本の人口構造はピラミッド型から瓢箪型そして逆ピラミッド型へと変わり、少子化に歯止めがかからない限り、若者を中心に生産年齢人口は減り続ける。
このような状況の中、人手不足に対応するには、働きやすい魅力的な職場環境を作り、人材の定着に努めることが大切だ。今回は、その具体的な取り組みについて考える。
スタッフの不安や心配事を軽減する
求人に対して応募してくる方の多くは、応募の前に店の様子を見ている。店のスタッフがつらい顔をしていたり、忙しく四苦八苦しているような様子を見て、躊躇する応募者は多い。逆に採用に困っていないという店に行くと、スタッフが笑顔ではつらつとして働いている。こうした店の雰囲気、風土は、一朝一夕に出来上がるわけでは無いが、楽しく働きやすい環境の方が定着率が高いのは言うまでも無い。
そうした環境を作るには、休日出勤やサービス残業を無くし有給も消化させるといった、法律で定められた最低限のルールを遵守しなければならない。 ある居酒屋チェーンの経営者は「社員の離職率を下げる特効薬は、週1回でもきちんと休暇を取ってもらえるようにすること」と語っていた。
また、レジ前にお客が並んで会計しているところをみると、「間違ったらどうしよう・・・」とか不安な気持ちになる応募者やスタッフは多い。あってはならない話しだが、レジに違算が出ると、その日に出勤した店員全員で立て替えているという小売店もある。
また、某ホームセンターが、手打ちのレジをPOSに切り替えた時のこと。狙いは品揃えや発注精度の向上にあったが、思わぬ効果があったのが採用率のアップだった。レジ作業を不安に思う人が多いことの表れだろう。
作業負担の軽減に役立つシステム
飲食店では、大手を中心にスタッフの作業負担を軽減する取り組みが進んでいる。セントラルキッチンの活用や自動化された厨房機器の導入などにより大きな成果をあげている。 しかし、簡単にまねできるわけではない。そこで、どんな店でも導入でき大きな効果を期待できる2つのシステムについて取り上げる。
セルフオーダーシステムで作業負担を軽減
すでにハンディターミナルを使ったオーダーシステムは、多くの飲食店で導入されているが、その導入が加速している。料理を注文したいが、いくら呼べどもオーダーベルを鳴らせどもスタッフが来ないといったクレームは多い。また、忙しいスタッフをみて追加注文を遠慮するお客もいる。セルフオーダーを導入することで、お客のイライラは解消され、客単価アップにもつながる。
繰り返しオーダーの多い居酒屋や焼肉業態。多層階で宴会場を持つ店であったり個室の多い店では、セルフオーダー導入によってスタッフの作業負担は大幅に軽減される。 作業に余裕が出ることで、お客とのコミュニケーション向上にもなり、追加オーダーやリピート客が増えたという店も多くある。
また、セルフオーダー用のタッチパネルの表示メニューは、本社から全店一斉に行うことができる。季節メニューのPRなども一般的なメニューブックの入れ替えを行う場合にくらべて、安価で迅速に対応できるといったメリットもある。
自動釣銭機でスタッフの不安を払拭
オーダーシステムを導入することで、作業動線は短縮される。また、オーダーから調理指示、会計まで情報が共有されることで、オーダーミスや会計漏れはほとんど解消できる。だが、釣銭の受け渡しミスの問題が残っていた。この問題を解消したのが自動釣銭機である。
前述の通り、金銭を扱うことに対する不安や負担を感じるスタッフは多い。自動釣銭機を導入する店が増えているのは、金銭を扱うことによるスタッフの心理的な負担軽減と、釣銭間違いによる売上ロスの解消にもつながる。
営業終了後の現金カウントなどレジ締め時間も短縮されることで、閉店後の帰宅時間も早めることができるといった効果もある。
セルフPOSは双方の負担を軽減
最近スーパーで見かけることが多くなったセルフPOSシステム。スーパーマーケットでも人手不足が深刻で、特にレジスタッフの採用難が続いている。こちらも金銭を扱うことが負担になることが理由の一つだ。
また、レジが複数設置されていても人員不足でオープンできないレーンがあると、お客からのクレームにもつながる。そこで、レジスタッフの作業負担軽減とレジ生産性アップのために、セルフPOSやスキャニングと支払いを分離したセミセルフとよばれるセルフPOSの導入が進んでいる。
こうした流れが飲食店にも影響を与えている。例えば、食べ放題で先払いシステムをとる店では、セルフPOSの導入実験を開始した。
また、会計の計算は店のスタッフが行い、支払いをお客が自動釣銭機で行う分離型の導入例も見られるようになった。今後は、飲食業界でもセルフPOSの導入が少しずつ進むのではなかろうか。
今回取り上げた、セルフオーダーシステムは、作業動線の削減、接客のスピードアップとオーダーミスの削減に。また、自動釣銭機とセルフPOSは、スタッフの負担軽減、売上ロスの削減、レジ締めの時間短縮に大きな効果を発揮する。
これらは、飲食店における業務の効率化と労働環境を改善し、人手不足や多様な働き方を求める人たちの定着化に有効な手立てであり、ひいては国をあげて取り組む「生産性と働き方改革」に直結し、導入即成果を期待できるシステムであることは間違いないだろう。
月刊飲食店経営 毛利 英昭氏
コンサルティング会社に16年間在籍後、2007年4月に独立し(株)アール・アイ・シー設立。外食・小売業界を中心に業務改善やシステム構築分野のコンサルティングと社員教育などを中心に活動。
2015年に商業界から、「月刊飲食店経営」「月刊コンビニ」の出版事業を引き継ぎ、現在は編集長を兼務している。
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