サイト内の現在位置を表示しています。

DX活用で人材難を乗り越える、株式会社Pay it Forwardの取り組み事例とは

ぐるなび創業メンバー、現マーケティング会社代表が語る「飲食店DX」

2024年12月10日 カテゴリ:コラム

執筆者:株式会社ナイアガラ 代表取締役 大滝徹也氏

飲食業界における慢性的な問題といえば、一番に上がるのが人手不足。この最大の問題に対し、DXを活用して日々進化している飲食企業があります。

株式会社Pay it Forward(以下(株)PIF)は、2021年3月に創業店舗をオープン。3年目の現在、6店舗を運営している勢いのある企業です。人材難といわれる飲食業界で、なぜ(株)PIFは躍進し続けているのか。代表取締役 宮﨑元成氏の取り組みを中心に、人手不足におけるDX活用事例をご紹介いたします。

飲食店で働く人々

なぜ外食業界は人手不足になるのか?

そもそも、なぜ、飲食店は人手不足になるのか。皆さんは、どうお考えでしょうか?

飲食店関係者に聞いて多く寄せられた回答は「きつそうだから」「給与が安いから」「休みがなさそうだから」「立ちっぱなしだから」などがあがりました。これらはどれも「応募がない」ことへの根拠につながるのかもしれません。また「応募がないこと」と同様に重要視されるのが「辞めてしまうこと」。離職率の高さも、飲食業界において大きな問題といわれています。なぜ、せっかく入ってくれたのに辞めてしまうのか。どうしたら辞めないのか。

「応募を増やすにはどうしたらいいか?」
「辞めないようにするにはどうしたらいいか?」

この2点が大切!と思っている方も多いと思いますが、(株)PIFは違った切り口でも対策していました。

最初の関門、「受け入れ前」のDX

「受け入れの段階でしてしまった“採用のミス”は教育では取り返せない」と宮﨑代表は言います。「採用のミス」とは?それを防ぐDXとは?

店舗が増えてくると、採用時の面接は社長以外の店長や社員が行うことが多いと思います。そうすると何が起こるのか。「人に依存した採用になってしまう」ことです。人に依存した面接だと担当者によって採用する人の傾向が変わってしまうため、企業理念の浸透やいいチームづくりに弊害が起こることがあります。

そこで(株)PIFでは面接の前に「性格診断アプリ」を活用して、応募者の性格や考え方の傾向を分析しています。応募があるとすぐ定型メッセージを応募者へ送り、質問事項などに答えてもらいます。またこちらと一緒に「性格診断アプリ」のURLも送ります。診断結果があらかじめ設定していた数値以外の場合は、面接へ進まずに不採用となるのです。面接の前に自社と応募者のミスマッチを防ぐことができ、無駄な面接時間の削減にもつながっています。

具体的な例として・・・
診断項目Aの数値が5以下だった場合。この人の特徴として「言われたことをやるのが得意」ということがあげられます。これはとてもいい特徴かもしれませんが、スタートアップ企業である(株)PIFには不向きな人材であると宮﨑代表は考えています。組織も大きく従業員も多い大企業では優秀な人材かもしれませんが「自社の方針とは合わない」と線引きをすることで、その後の教育時間のロスもなくなります。逆に、診断項目Aの数値が20以上もNGとしています。この人の特徴は「自由すぎること」。創業当初は勢いも必要で向いている人材と判断していたのですが、退職していった人の傾向を分析すると、この特徴を持った人が多かったというデータが出ていました。このように、データを常にブラッシュアップすることで「精度の高い性格診断アプリの活用」になってきています。

性格診断以外にも「Google Form」を活用したアンケートを面接前に実施しています。どんなに性格診断の結果がよく即戦力になりそうでも、妥協して採用することはしません。いくつかのアンケート項目の中で必須項目を入れており、例えば「人を喜ばせることが好きですか?」に対して「いいえ」と答えた人はNGです。接客業としてあたりまえのことかもしれませんが、こうした応募者の性格や考え方の傾向は事前に確認しておくことが大切です。

採用後のフォロー、「面談」におけるDX

採用後にスタッフをフォローすることで、離職率の大幅な軽減を感じている方も多いと思います。しかし、店舗が増えて従業員が増えると、中々現場に行って全スタッフと面談する時間が取れないのではないでしょうか。

宮﨑社長自身も他社へのプロデュース事業などで東京にいないこともあり、多忙を極める中ではありますが、全社員と毎月1回の面談は欠かしていません。全ての面談はオフラインではなく「オンライン」で行うことで、移動距離によるNG理由を消滅させました。日本全国はもちろん、海外にいるときでも面接を行える環境になり、スタッフ自身も「オンライン面談」に慣れているので、オフラインと変わらない温度感でスタッフの状況を把握することができています。

また面談方法についても、入社時に行っている性格診断を毎月行っています。精神状態の変化を汲み取り、悩みや不安を事前に予測することで、面談時のスムーズな対応、コミュニケーション強化にも役立っています。

厳選して選んだ素晴らしいスタッフが実力を発揮できる環境になっているか確認し、店長任せの属人的な指標でなく、DXも活用してコミュニケーションを深めることで離職率の低下につなげているのです。

スピーディーなお客さまアンケートのフィードバックが、エンゲージメント向上に寄与

「働きがい」を持ってもらうことが離職率低下につながるのはどの業種でもいえることですが、飲食店での働きがいとは、やはり「お客さまの声」につきます。

(株)PIFではモバイルオーダーを活用しており、人件費削減やサービス向上にもつながっていますが、オーダーする際にLINEアカウントと連携できるため、来店したお客さまに対するプッシュ型の配信が可能になっています。販促的な効果ももちろんありますが、一番効果を感じているのが「アンケートメッセージ」です。来店した翌日に配信し、飲食時に感じたことをアンケートで回答していただくのですが、記述式の回答を多くいただけるのも大きな特長です。

既存の覆面調査などでは集計の時間もかかっていたため、フィードバックがすぐにもらえるのは大きな改善といえるでしょう。悪かった点の回答に対しすぐに対策を打てるので、チャンスロス削減に確実につながっています。そして良かった点の回答では、味や盛り付け、接客面のコメントももちろんですが、スタッフ一人一人に対してお褒めの言葉をいただくことも多く、スタッフのモチベーションアップにつながっています。日々の営業に対してスピーディーに、そして実際に来店されたお客さまからの声をいただくことで、働きがいを感じ、自分自身が成長する意欲にもつながっていくのです。

人手不足への対策、エンゲージメント向上にDXを

最初に例をあげた飲食業界に対するイメージは、大手企業を中心に現在ではほぼ解消されつつあります。週休2日はあたりまえとなり、給与水準も学生アルバイトからそのまま卒業後に社員になれば、他の新卒企業より多いことも珍しくありません。(株)PIFでは社員の週休3日体制を目標に掲げており、アルバイトから社員として採用するリファラル採用に関しても積極的にチャレンジしています。そのために必要なのは利益を出すこと。業績が悪くては良い制度も導入できませんので、営業面だけでなく人事労務面でもDXを活用し、人時売上高の徹底管理、売上・原価に関してもタイムリーに管理できる体制を整えています。

高価なシステムを導入しなくても、LINEやGoogleの機能を使い、またExcelなどを最大限活用することでも飲食店のDXは加速します。自社の理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に合った取り組みを「DXで加速させていく」という言葉が、(株)PIFなどの勢いある企業を見ていると正しく感じます。

人がやるべき仕事を人がやる。それ以外のことは大きな意味でのDXを使い、効率よく運営していくことが、これからの飲食店経営には必要なことだと思います。

  • 本コラムに掲載されている商品またはサービス等の名称は、各社の商標または登録商標です。

株式会社ナイアガラ
代表取締役 大滝 徹也氏

ぐるなび創業期のメンバーの一人。関東エリアマネージャー、シニアマネージャーを歴任。
住商アーバン開発株式会社、株式会社トラジを経て、2007年に株式会社ナイアガラ設立。
大手メーカーや行政へのブランディング戦略提案、広告企画制作、SNSマーケティングの実績も多数。飲食店、商業施設のサポート業務としては消費者視点でのマーケティング戦略で、コンセプトメイク、PR、デザイン、問題点改善提案、店舗開発などを行う。
全国でのSNSセミナー講師の他、企業へのSNS導入実績は100店舗以上。
また2019年より沖縄県名護市で飲食店「SUNNY TACOS」を創業。自身も現場に立ち、自店のブラッシュアップはもちろんのこと、クライアントへのマーケティング提案にも活用している。

株式会社ナイアガラ 代表取締役 大滝徹也氏

他のコラムを読む