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飲食業界は「デジタルの戦い」へ。業態開発、リピーター獲得にテクノロジーの活用は必須

コロナ禍のデリバリー市場において業績を伸ばす株式会社Globridge 大塚社長のコラム【連載コラム第5回】

2022年04月26日 カテゴリ:コラム

インタビュー:株式会社 Globridge 代表取締役 大塚 誠氏

コロナ禍で浮き彫りになった飲食店経営の課題、急拡大するデリバリー市場の可能性、そして飲食業界は今後どう変化していくのかについて、株式会社Globridgeの代表取締役・大塚誠氏に聞く当連載。最終回では、飲食業界におけるテクノロジーの活用について伺いました。

株式会社 Globridge 代表取締役 大塚誠氏

業態開発には顧客ニーズの分析・反映が必要

飲食店の業態開発において重要なのが、徹底したマーケティング。繁盛店へと成長させるためには、オーナーの“思い”だけで業態づくりに取り組むのではなく、顧客のニーズを反映させていくことが欠かせません。

株式会社Globridgeでは、飲食店向けに集客の課題解決を支援するコンサルティング事業も展開しています。こうしたノウハウをもとに、大塚氏は「業態開発ではデジタルツールを活用してセグメンテーション(細分化)を行い、顧客ニーズを探っていくことが必要です」と話します。

「飲食店マーケティングにおけるセグメンテーションとは、客層を年齢や性別などでグループ分けすること。グループごとの顧客ニーズを把握できると、効率よく集客することができます。飲食店は客層をある程度広めにとっておかないと稼働率が最大にならないのですが、すべての客層を満足させようとサービスを提供すると、“平均点”はとれてもファンを獲得しリピーター化するのが難しくなります。“選ばれる店”になるためには、セグメンテーションによって自店がどんな客層に支持されているのかを知り、求められるニーズに応えていかなければなりません」

悩んでいる女性

例えば、客層が幅広い業態として挙げられる居酒屋でアンケートをとり、30~40代のサラリーマングループが25%、続いて30代の女性グループが18%を占めていると分かった場合、この二つのターゲットに絞って顧客ニーズを探っていく必要があります。

「それぞれの注文する商品や客単価はもちろん、どんな要素が満足度につながっているのかを調べることで、ベストなメニュー提案やサービス提供をすることができます」

そして、こうしたマーケティングを効率的に行うには、デジタルツールを活用する必要があります。

「きちんとデータを分析すると、感覚ではとらえられない部分が見えてきます。これからの飲食店経営は、“デジタルの戦い”になっていきますね」

デリバリーこそ顧客ニーズを把握する

デリバリーは顧客と接する機会がなく、どんな客層が利用しているのか見えづらいことから、マーケティングの必要性が高まっています。大塚氏は自社での取り組みをもとに、デリバリー事業において顧客の年齢、性別、どんなシーンで食べているかなどを調べることの大切さを次のように話します。

「当社ではデリバリーブランド『東京からあげ専門店 あげたて』を展開しているのですが、最初は『ガタイのいい人がコーラを片手に食べるだろう』というイメージで、肉のポーションを大きめにして容器からはみ出すくらい盛り付けていました。でも、ジャンクにすればするほどCSが下がっていくので、客層を調べたら20~30代の女性が60%を占めていることが分かったんです。女性って外でからあげを食べるのに抵抗のある人が多く、家で一人のときなら食べたいというニーズがあるみたいで。そこで、からあげを大きすぎないサイズ感にしてオシャレな箱に入れ、ディップソースを付けるなどのマイナーチェンジを行うと、CSが上がっていきました。デリバリーはお客様の顔が見えないからこそ、きちんと顧客アンケートをとって客層とニーズを把握することが大切ですね」

顧客との関係性を築き、リピーターを増やすには

飲食店にとってリピーターを増やすことは、売り上げの安定につながります。お店の“ファン”を獲得していくためには、ニーズに応えるだけでなく顧客との関係性を築いていくことも大切ですが、この関係性の構築がうまくできないケースが多いと大塚氏は指摘します。

「顧客アンケートを実施する際、『サービス改善のために教えてください』とアプローチしがちなのですが、そうすると店側の都合だと受け取られてしまい、好印象を持たれません。そうではなく、『好きな料理は何ですか?』、『嫌いな食べ物はありますか?』など、お客様への気遣いが伝わる聞き方をして、アンケート結果に基づいたカスタマーサービスをしていくべきだと思うんです。例えば、前回の利用時に『シイタケが苦手』と回答していた人にはシイタケ抜きのメニューを提供したり、『ご飯が多くて残してしまった』という人にはご飯を少なめにしたり。デジタルツールを活用すればCRM(顧客管理)がうまくでき、再利用時に顧客ニーズに合わせたサービスを提供できます」

デジタルツールを活用している女性

また、顧客と繋がろうとLINEやメールアドレスを登録してもらい、定期的にメッセージを送っている飲食店も多いでしょう。しかし、こうした店側からの一方的なコミュニケーションは、お客がかえって遠ざかってしまう原因になると大塚氏は言います。

「お客様に営業的なアプローチをしても、受け入れられません。サービスを通して『お客様を大切にしている』という店側の姿勢を伝えることが大切で、それがお客様にとってリピートする理由になります」

デリバリーモニターを集客につなげる

リピーターづくりはもちろんですが、飲食店にとって一番ネックになっているのは、新規顧客の獲得です。

店内飲食とデリバリーのハイブリッド型で飲食店を運営する場合、「キッチンが稼働していない時間をどのように有効活用するかがポイントになる」と大塚氏は指摘します。この課題を解決するためには、テクノロジーを駆使することが必要です。

「行ったことのない飲食店で失敗するのって、誰もが嫌だと思うんです。だからネットの口コミで評価が良かったり、信頼する友だちからおすすめされたりしないと、新規利用にはつながりづらい。対策として割引などで集客するケースもありますが、お得なキャンペーンを目当てに来店したお客様は『安くないなら行かない』といった方もいて、再来店につながらない傾向があります。一方で新規利用のハードルを下げ、リピーターにつなげる方法として期待できるのが、グルメモニターによる集客だと考えています」

謝礼を受け取ってサービスを体験し、感想をまとめる「モニター」は、飲食店でも料理やサービスの質を向上させるために導入することがあります。モニターとして飲食店を利用した人は、仕事として料理やサービスを評価しているからこそ、自身が満足できるお店があればリピーターになる可能性が高いそうです。

「特にデリバリーでモニターを実施すると、いい効果を生むと考えています。デリバリーって店内飲食よりも不満が発生する確率が高いので、品質が安定しているお店を見つけたら『また利用したい』となるんです。モニターとして感想を書いて提出し、その声が反映されていたら、なおさら定着しますね。さらに、デリバリーモニターの募集は飲食店の配達可能な範囲内で行われるので、モニターをする人たちはデリバリーはもちろん店内飲食においてもリピーター予備軍なんです」

モニターの情報を管理する際にも、デジタルツールを活用することは必須です。業態開発から新規集客、リピーター化まで、これからの時代はデジタルを制することが、飲食店の経営基盤を固めていくことになるでしょう。

コロナ禍で大きな打撃を受ける飲食業界ですが、デリバリー市場の拡大によって新たなビジネスモデルが構築されようとしています。実店舗にとどまらずオンライン上でもブランドを運営、キッチンは空いている設備をシェアリングするといった取り組みが進めば、店内飲食だけに依存しない経営が可能になっていくでしょう。もちろん、こうした展開にテクノロジーの活用は欠かせません。苦境を強いられながらも変化を遂げる飲食業界の今後に、期待が高まります。

株式会社 Globridge
代表取締役 大塚 誠氏

株式会社 Globridge 代表取締役 大塚誠

飲食業界のDX化を志し2008年にグロブリッジを起業。
2021年から デリバリープラットフォームを開発に着手し、スピード展開を実現している。

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