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「店内飲食にマネタイズを依存しない」。“ハイブリッド型”の経営が成長へとつながる
コロナ禍のデリバリー市場において業績を伸ばす株式会社Globridge 大塚社長のコラム【連載コラム第4回】2022年04月12日 カテゴリ:コラム
インタビュー:株式会社 Globridge 代表取締役 大塚 誠氏
株式会社Globridgeが運営するデリバリープラットフォームサービス「ご近所キッチン」は、店舗キッチンの有効活用を図りたい飲食店はもちろん、デリバリーサービスの拡充を狙う飲食ブランドとの提携も順調に増えてきています。こうしたビジネスモデルの登場により、飲食店経営の新たな可能性が広がることになりそうです。
連載第4回では、日本の飲食店がコロナ禍を経て成長していくためには、どのような経営戦略を立てるべきなのか、同社代表取締役・大塚誠氏に聞きました。
これからの飲食店経営者が描くべき成長戦略
従来の飲食店経営者が描いてきた成長戦略は、「店舗数を増やす」ということに終始していました。まずは直営店を展開し、フランチャイズで店舗数を増やして、海外へと進出。最終的にはこうした経験を生かして飲食店のコンサルティング事業を手掛け、店舗数を増やし事業を拡大するためのノウハウを提供するというのが、飲食業界における一般的な成長戦略だったと大塚氏は話します。
「僕自身、店舗数を増やすほどいろんな問題に直面しましたし、ある程度事業を拡大してからは頭打ちの状態になったこともありました。そこで正攻法とされてきた戦略に違和感を覚え、飲食店が成長するための方法は他にないのか模索したところ、『マネタイズ(※)ポイントを増やす』ということが必要なのではないかと考えるようになりました。これまでの飲食店は店内飲食がマネタイズポイントの大部分を占めていたので、営業時間を延ばしたり店舗数を増やしたりすることでしか売り上げを最大化させる方法がなかったんです。だから、マネタイズポイントを増やすことで、飲食店は新たな展開ができるはずです」
- ※マネタイズ…サービスから収益を得ること。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、消費者のライフスタイルは大きく変化しました。連載第1回でもお伝えした通り、飲食店が店内飲食のみで営業を続けた場合、アフターコロナの売り上げはコロナ前の70%程度にとどまるだろうと予想されています。
店内飲食だけに頼ることが難しくなったからこそ、これからの飲食店経営にはマネタイズポイントを広げるという考え方が必要なのです。
飲食店は発信力を高めメディア化するべき
大塚氏は「アイデア次第でマネタイズポイントは広がる」と言いながら、一つの方向性として、飲食店が自社メディアを持つことを提案しています。テレビや雑誌などのメディアでは、グルメ情報が人気企画の一つであることから、飲食店を紹介する特集が多く組まれます。こうした背景から、飲食店は情報発信をメディアに依存しがちなのが現状。飲食店は消費者の興味関心が高いコンテンツを持っているからこそ、発信力を強化すると、そこにマネタイズポイントを見出せる可能性があるのです。
「飲食店が提供する料理やサービスは、旬をとらえたり流行りを作ったりできるのが魅力。自社メディアを運営してこうしたコンテンツを発信していけば、もっと消費者と繋がり、社会への影響力を持つことができます」
大塚氏はそう話しながら、コロナ前に構想を練っていた「テーブルメディア」についても教えてくれました。
「飲食店に来たとき『いいな』と思うモノって、いっぱいあると思うんです。『このお皿かわいい』、『クロスがおしゃれ』、『飾っている絵が素敵』など、実際に欲しくなる人も多いですよね。つまり飲食店でモノを使うこと自体が宣伝になるので、インテリアの協賛を募って低コストで空間を作り、店内で使って気に入ったモノは実際に購入できる仕組みを構築すると、協賛企業にも自社にも売り上げが入ります。こんなふうに飲食店をメディア化できたら、新しい価値を生み出せると思うんです」
マネタイズポイントを増やしハイブリッド型へ
メディア化以外で飲食店のマネタイズポイントを増やす戦略として考えられるのは、デリバリーとテイクアウトです。キッチンで調理してお客に提供するというのは店内飲食もデリバリー、テイクアウトも同じですが、マネタイズポイントが違うだけで、これまで外食に取り込めていなかった需要を獲得できるようになります。
「マネタイズポイントを店内飲食だけにしておいたら、アフターコロナには大半のお店は売り上げ減となってしまいます。デリバリーやテイクアウトのように、店内飲食に加えて新たなマネタイズポイントを作る“ハイブリッド型”での運営が、今後の飲食店には必須になってくるでしょう」
大塚氏は、ハイブリッド型の飲食店経営こそ新たな飲食店の展開につながっていくと期待しています。
ブランドの展開とキッチンの有効活用を考える
店内飲食とデリバリーのハイブリッド型で飲食店を運営する場合、「キッチンが稼働していない時間をどのように有効活用するかがポイントになる」と大塚氏は指摘します。この課題を解決するためには、テクノロジーを駆使することが必要です。
「今はさまざまなサービスがあるので、テクノロジーでキッチンを有効活用できるようなシステムを作れば、その日何人のスタッフが勤務するのかを踏まえて、どれくらいの空き時間が発生しそうなのかを予測し、新たな仕事を受注することが可能になります。弊社が運営する『ご近所キッチン』のようにネット上でオーダーを受け付ければ、登録されている全国の飲食店へとオーダーが飛び、調理してお客様のもとへ届けることができます。空いているキッチンをシェアリングできると、新たな飲食店経営の可能性が見えてきます」
同社が運営する「ご近所キッチン」では、あらゆる飲食ブランドとの提携が始まっています。デリバリーサービスを拡充させたい飲食ブランドと、キッチン設備を有効活用したい全国の飲食店をつなぐことで、ブランドの実店舗がないエリアにもデリバリーサービスを提供することができるようになりました。
「ブランドの売り上げを向上させるためには、これまでは店舗数を増やすことが必要でした。でも今は、店舗数ではなくキッチン拠点を増やすことで、提供できるエリアが広がり売り上げを最大化することができます」
ブランドをどう展開していくか、そしてキッチンをどう活用するのか。二つの視点が、今後の飲食店経営に求められることになりそうです。
次回はデリバリー事業の最新テクノロジーについて、大塚氏にお話しいただきます。
株式会社 Globridge
代表取締役 大塚 誠氏
飲食業界のDX化を志し2008年にグロブリッジを起業。
2021年から デリバリープラットフォームを開発に着手し、スピード展開を実現している。
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