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いつ・どこでも出来たての料理を提供。コロナ禍で急拡大したデリバリー市場の可能性
コロナ禍のデリバリー市場において業績を伸ばす株式会社Globridge 大塚社長のコラム【連載コラム第2回】2022年01月25日 カテゴリ:コラム
インタビュー:株式会社 Globridge 代表取締役 大塚 誠氏
国内外に飲食店を展開する株式会社Globridge(グロブリッジ)。コロナ前から日常的にフードデリバリーが提供されていた海外への出店で知見を広げ、その経験を生かして国内でデリバリーに特化したゴーストレストランを運営するようになりました。コロナ禍以降は、デリバリー事業にいっそう注力し業績を伸ばしています。
連載第2回では、コロナ禍で急拡大したデリバリー市場の可能性について、同社代表取締役・大塚誠氏に聞きました。
デリバリー市場の成長に期待が高まる
長引くコロナ禍で苦境を強いられている飲食業界にとって、フードデリバリーは新たなビジネスモデルへシフトチェンジしていくための突破口になるだろうと期待が高まっています。
アメリカでは2020年にフードデリバリーの大手企業がニューヨーク証券取引所へ上場し、時価総額が6兆円を超えたことで話題となりました。日本でもフードデリバリー大手が大規模な投資を呼び込んだことで注目を集めるなど、世界的にデリバリー市場への投資が集まるようになっています。こうしたデリバリー市場の急成長の裏側について、大塚氏は次のように話します。
「フードデリバリーは外食産業の位置付けではなく、テクノロジー産業に属します。飲食物を宅配するというのは、昔ながらの出前をイメージするとアナログな印象を受けますが、注文から代金の支払い、商品を受け取るまで一連の流れがスムーズに進むのは、ハイレベルな技術があるからこそ。そして、今後も市場の成長が予想されるため、技術革新に大規模な投資が行われています。伸びしろは、まだまだありますね」
日本はフードデリバリーにおいては後進国。先進国と呼ばれる海外の事例を見てみると、フードデリバリーの売上が外食産業市場の2割を占めるようになっており、日本でも同等まで市場が拡大していくと考えられます。現在、日本の外食産業市場規模は約30兆円で、そのうちデリバリーは約5000億円。 今後は10倍程度に伸びて5~6兆円に到達することが予想され、デリバリー市場は大きな可能性を秘めていると言えます。
フードデリバリーの背景にある技術革新
日本には出前文化があり、蕎麦店や中華料理店などといった店側が調理から配達までを担うのが一般的でした。ところが店内飲食で忙しいときに店舗スタッフが配達を行うのは負担が大きく、その割に採算が合わないといったこともあり、時代の流れとともに出前を行う飲食店は減少してきました。こうした出前にまつわる課題を技術革新によって解決したのが、フードデリバリーの注目すべきところです。
フードデリバリーは個人の家までモノを運ぶという点では宅配便と同じですが、食べ物なので物流センターに集めてから配送するといった時間軸が許されません。出来上がった料理を店舗から個人宅まで30分程度で届けなければならず、テクノロジーによってリアルタイムで配達員の予想到着時間を計算して知らせるオンデマンド配送が行われています。
「こうした配送は、料金を高く設定しないと採算が合わないはずなんです。でも、実際のフードデリバリーではそれほど高い配送料に設定されていません。これは技術革新によって配達員がスキマ時間に働くことが可能になったり、商品の受け取り時間もロスがないように計算されるようになったからこそなんです」
「出来たての料理を食べたい」というニーズに応える
「出来たてのおいしい料理が食べたい」という思いは、多くの人が持つものでしょう。それを実現するには、これまでは自炊するか外食するかの二択しかありませんでした。自炊も外食もできないときは、妥協して食事を選ぶ人が多かったと大塚氏は言います。
「時間に余裕がないときって、スーパーやコンビニで出来合いの総菜を買うなど、『これが食べたい』じゃなくて『これでいいや』という感覚で食事を選ぶことが多いと思います。でも、出来たてのおいしい料理を食べたいと思っている人は多いはず。フードデリバリーなら飲食店はそうした消費者のニーズに応え、出来たてのレストランの味を自宅に届けることができます。自炊と外食以外にフードデリバリーという選択肢が新たに加わったことは、外食業界の可能性を広げてくれると思っています」
その理由について、大塚氏は次のように語ります。
「日本ではコロナ禍を機にデリバリーを始めた飲食店が多いため、デリバリー専用のメニュー開発がまだできていない部分も大きいのが現状。キッチンで100点に仕上げた料理は店内飲食なら満点で提供できますが、デリバリーの場合はお客様の手元に届くまでに時間がかかります。それを理解して、お客様の手元に届いたときに100点になるような作り方を考えていかなければなりません」
海外で増加する「フードコート型ドライブスルー」に注目
デリバリー市場の拡大を経て次に注目したいのは、「フードコート型ドライブスルー」だと大塚氏は言います。一つのキッチンで複数ブランドのメニューを提供するドライブスルーのことで、アメリカをはじめとする海外で増えてきています。
「フードコート型ドライブスルー」は、お客にとっては一つのドライブスルーでいろんなブランドのメニューを注文できるのがメリット。店側にとってはロードサイドへ新規出店する必要がなく、キッチンと契約するだけでドライブスルーを始めることができるというメリットがあります。
「これまではデリバリーやテイクアウトの料理であってもブランドの実店舗でしか作れなかったのに、最近はデリバリーに特化したゴーストキッチンが増え、一つのキッチンで複数の異なるブランドのメニューを作り提供することが可能になりました。いわゆるブランドとキッチンが切り離されるという事態が起こっています。ゴーストキッチンのようにキッチン主体の店舗なら、ランチ、カフェ、ディナー、夜食など時間帯によって異なるブランドの料理を作ることができます。これを海外の事例のようにドライブスルーに落とし込めば、かなり伸びていくと思いますね」
日本で「フードコート型ドライブスルー」の展開を実現するには、ブランドを離れてキッチンに調理を任せても、きちんと品質を保てるのかという課題をクリアする必要がありそうです。技術革新を進めながら、ドライブスルー専用の商品開発が重要となるでしょう。
次回は、デリバリー市場の拡大によって、ブランドとキッチンのあり方がどのように変化したのかを詳しく見ていきます。
株式会社 Globridge
代表取締役 大塚 誠氏
飲食業界のDX化を志し2008年にグロブリッジを起業。
2021年から デリバリープラットフォームを開発に着手し、スピード展開を実現している。
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