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「コロナ禍だからこそ得られたものがある」
飲食店経営者として危機直面時に考えるべきこと
人気ラーメン店 麺屋武蔵 矢都木社長に聞く!コロナ禍での店舗生存戦略【連載コラム第5回】 2021年11月16日 カテゴリ:コラム
インタビュー:株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長 矢都木 二郎氏
コロナ禍の柔軟な危機対応と向き合ってきた麺屋武蔵の取り組みについて、同社社長の矢都木氏に聞く当連載。最終回では、コロナ禍だからこそ得られたものや、今後のビジョンについてうかがいました。
コロナ禍で得られた商品開発力を今後に生かしたい
既存店舗の名物メニューをラーメン以外の商品に応用したバーチャル店舗での新商品の提供や、贈答品ニーズなども想定した通販商品のオーダーメイドラーメンなど、この1年半あまりでさまざまな新しい取り組みを続けてきた同社。
いずれもコロナ禍の状況でできることを探した結果ではありますが、それによって得られたものも多いと矢都木氏はいいます。
「商品開発力はかなり上がったと感じています。試行錯誤を続けてきたことで、バーチャル店舗の商品やオーダーメイドラーメンも、もう何でも作れるというのは自信がありますね。今後は、通販やデリバリーで生まれた新しいアイデア をリアル店舗で展開していけたらと考えています。
あとは、この商品開発力をB to Bビジネスとして広げていくことにも力を入れたいと思います。たとえば、企業に向けて新業態開発のお手伝いやメニュー提案をするといったことができれば、コロナ禍で向上した商品開発力を今後につなげていくことができるのではないかと思っています」
終息後の通販・デリバリーはどうする?
新型コロナの来客数減少で、やむを得ず通販やデリバリーを導入した同社ですが、終息後はこれらの販売形態の扱いについてはどう考えているのでしょうか?
「通常のメニューについては、できれば通販やデリバリーはやめて、かつてのような実店舗だけのサービスに戻したい気持ちはありますが、それも各店舗の状況に合わせて店主に判断してもらえばいいかなと考えています。新形態メニューについては、今後も残したいと思っています」(矢都木氏)
危機に直面したら、ともかく生き残ることを考える
今回のコロナ禍に限らず、想定外の危機に直面したとき、飲食店経営者としてどのように向き合えばいいのでしょうか。
「やはり、まずは生き残ることを考えるというのが何より大切だと思います。だから私たちも、『店舗体験にこだわる』というこれまでのポリシーを一旦手放してでも、通販やデリバリーを取り入れました。もしあのとき、ポリシーにこだわっていたら、おそらく生き残ることはできなかったと思います」(矢都木氏)
新しい取り組みをするにあたっては、思ってもみなかったハプニングや失敗も起こりますが、それでも手探りでもともかく試行錯誤をしていくことも大切だといいます。
「たとえば通販では、スープの袋の中にチャーシューを入れることはできるのですが、単独でパックすることはできないといった細かいルールがあります。しかも、保健所によっても見解が違う場合があるので、情報を集めながら手探りで最適解を探すしかありません。現状のルールで決められていることをくつがえすことはできませんし、そこでグチをいっても仕方ないので、その状況に対してどうするかを考え、トライアンドエラーで進めていくしかないのだと思います」(矢都木氏)
「ラーメン年表」に登場するような存在になりたい
現在はさまざまなスタイルのラーメン店が登場していますが、業界のなかで麺屋武蔵はどのような立ち位置でありたいと考えているのでしょうか?矢都木氏は次のように語ります。
「今までになかった形態や、新しいことに取り組むラーメン店はどんどん出てくるので、私たちも負けずに頑張っていきたいと考えています。あとは、業界内の歴史のなかに『麺屋武蔵』の名前を残せたらという思いがあります。もし『ラーメン年表』のようなものがあれば、そのいろいろな場所に顔を出せるようなイメージです。
最初にお話したとおり、店名に『麺屋』を使ったラーメン店は私たちが最初なのですが、そのような感じで、ラーメン業界のヒストリーの要所要所で存在感を示せるような新しいチャレンジができたらいいですね」
コロナ禍という想定外の事態に直面しても、素早い判断と柔軟な行動、そして既成概念に囚われないユニークなアイデアで対応してきた麺屋武蔵。どのような状況であっても、そのときにできることを見つけてそれを実行し、そこで得られたものを先につなげていくことが大切なのでしょう。
株式会社麺屋武蔵
代表取締役社長 矢都木 二郎氏
2001年 麺屋武蔵に入社後、2013年「株式会社 麺屋武蔵」代表取締役 社長に就任。創業者、山田 雄のイズムを継承し、常に「革新的で上質」なラーメン店作りを目指す。ラーメン界の新しい取り組みとして、コラボレーション商品を多数提案、ロッテ、獺祭、などメジャーな所から、生産者や自治体など、マイナーな所まで、幅広くコラボレートして、多くの革新的なラーメンを生み出す。「チョコレートからフルーツまで、ラーメンにできない食材はない」と豪語する。「ラーメンの無限の可能性に挑戦する男」ラーメンの創作活動の傍、経営者として、業界の職種的地位向上に尽力。職場環境、待遇の積極的改善、「料理ボランティアの会」を通じてのボランティア活動などを積極的に行っている。
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