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既存の強みを生かした新商品を発売。デリバリーだからこそできる挑戦
人気ラーメン店 麺屋武蔵 矢都木社長に聞く!コロナ禍での店舗生存戦略【連載コラム第4回】2021年10月26日 カテゴリ:コラム
インタビュー:株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長 矢都木 二郎氏
麺屋武蔵では、ラーメン以外のメニューを販売する新形態の「バーチャル店舗」や、さまざまな企業とのコラボレーション、通販でのオーダーメイドラーメンといったユニークな取り組みも行っています。連載4回目の今回は、新しいアイデアが生まれる背景などについてうかがいました。
「バーチャル店舗」でラーメン以外の商品にチャレンジ
コロナ禍での店舗への来客数激減によって、やむを得ずデリバリーサービスを導入した同社ですが、デリバリーだからこそできることを生かした新商品も販売しています。
「某フードデリバリーサービスには、登録した店舗とは別のブランド名でプラットフォーム上にだけ存在する仮想の店舗を持つことができる『バーチャル店舗』というしくみがあります。それを利用して、ラーメン以外の商品を販売しています」(矢都木氏)
新商品といっても、まったく新しいメニューを作ったわけではなく、いずれも既存の人気メニュー・看板メニューを転用し、これまでラーメンにトッピングしていたものをパンやご飯と合わせることで新メニューを作っていることが特徴です。
たとえば神田店では、同店オリジナルの「蒲焼きチャーシュー」を使った和風弁当「ちゃあ重」を、吉祥寺店では、看板メニューの「チャーシューソーセージ」をホットドッグにした「タイガードッグ」を販売しています。
また、上野店からは、同店で人気のチャーシューを細かく裂いて野菜や目玉焼きと一緒にご飯の上に乗せたアメリカンテイストの「プルドポーク丼」が登場しました。
テストマーケティングの場として役立っている
ラーメン以外の形態の商品を出したことで、「デリバリーだとどうしても麺がのびてしまう」という課題もクリアすることができるなど、新たなメリットを見いだすことができたと矢都木氏はいいます。
「新たな実店舗を出すとコストがかかり、リスクも大きくなりますが、バーチャル店舗というスタイルであればタブレット1つで始められるので、テストマーケティングの場としてもとても有効だと感じました」
さらに、場所を選ばずに食べることのできる形態の商品を出したことで、これまでにはなかった新たなニーズも生まれているそうです。
「神田店の『ちゃあ重』は、デリバリーだけでなく店舗でも直接注文を受け付けているのですが、お弁当としてまとまった注文をいただくことが増えました」(矢都木氏)
現在は2万円以上の注文の場合、近隣であれば直接の配達にも応じているそうですが、今後はロケ弁などの新たな分野にも進出したいと矢都木氏は話します。
「ただお弁当を出すのではなく、自分達の強みを生かして食べた人の記憶に残る他とは違う商品を作っていきたいと思っています。もし今後、バーチャル店舗で販売していた商品からリアル店舗を出せるようになれば嬉しいですね。『コロナでも転んでもただでは起きなかった』といえるような結果が出せたらと思っています」
さまざまな企業とのコラボを長年続けてきた
このような新しいアイデアは、社内から上がってきたものを吸い上げて検討しているそうです。同社はこれまでにも、さまざまな企業とのコラボレーションでユニークなアイデアを形にしてきました。
「最初のコラボメニューは、ロッテのガーナチョコレートを使った商品でした。甘いチョコレートを使うということで、歴代のコラボ商品のなかでも一番苦労したかもしれません」(矢都木氏)
最近では、「日本七夕協会」とのコラボで通販限定の「七夕つけ麺」や、うなぎの養殖場と作った、うなぎの骨でダシをとった「鰻ラーメン」なども出しています。また、過去には、グリコの「アーモンドミルク」や、カルビーの「フルグラ」を使ったメニューも手がけたそうです。
「使う食材によっては価格が変わることもありますが、基本的に100食で15万円から作ることができます。会社をイメージしたラーメンを作ってお中元やお歳暮にしたり、結婚式の引き出物として2人のなれそめや出身地にちなんだラーメンを作ったりといった使い方をしていただけるのではと考えています」(矢都木氏)
オーダーメイドラーメンの販売も
また、通販でも新たなチャレンジとして、「オーダーメイドラーメン」を販売しています。これは、100食以上の注文で依頼者の思い通りのラーメンを作ることができるサービスです。
「企業以外では、日本薬科大学とのコラボで、薬剤師をめざす学生さんから食材のアイデアをもらって『花粉症対策ラーメン』や『熱中症対策ラーメン』を作ったこともあります。コラボ相手については、同業者でなければどこでもお引き受けしますし、面白そうな企業があればこちらからお話をもちかける場合もあります」(矢都木氏)
過去には給食づくりや被災地応援ラーメンも手がける
コロナ禍以前からさまざまな取り組みを行ってきた同社ですが、過去には社員の研修をかねて学校給食づくりに挑戦したこともあるそうです。
「学校給食は制約がすごく多いんです。当日の朝にゼロから調理をスタートしてお昼までにすべて作らないといけないルールなので、前日に味玉を仕込むこともできません。大変でしたが、子どもたちにはすごく喜んでもらえたのでよい経験だったと思っています」
そのほかにも、チャリティー活動を行う「料理ボランティアの会」に所属。被災地のご当地ラーメンとして、石巻でとれた魚のあらを使った「あら〜麺」を監修するなどの活動もしていたそうです。
バーチャル店舗での新商品や通販メニューなど、コロナ禍の状況でも柔軟な取り組みができたのは、同社がこれまでもユニークな取り組みを続けてきたバックグラウンドがあったからこそなのかもしれません。
連載最終回の次回では、コロナ禍で得られたことや今後のビジョンについてうかがいます。
株式会社麺屋武蔵
代表取締役社長 矢都木 二郎氏
2001年 麺屋武蔵に入社後、2013年「株式会社 麺屋武蔵」代表取締役 社長に就任。創業者、山田 雄のイズムを継承し、常に「革新的で上質」なラーメン店作りを目指す。ラーメン界の新しい取り組みとして、コラボレーション商品を多数提案、ロッテ、獺祭、などメジャーな所から、生産者や自治体など、マイナーな所まで、幅広くコラボレートして、多くの革新的なラーメンを生み出す。「チョコレートからフルーツまで、ラーメンにできない食材はない」と豪語する。「ラーメンの無限の可能性に挑戦する男」ラーメンの創作活動の傍、経営者として、業界の職種的地位向上に尽力。職場環境、待遇の積極的改善、「料理ボランティアの会」を通じてのボランティア活動などを積極的に行っている。
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