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シェアリングエコノミーが後押しするゴーストキッチン

「月刊飲食店経営」の編集長が語る! 外食業界コラム

2021年08月18日 カテゴリ:コラム

執筆者:月刊飲食店経営 毛利 英昭

経営者にとって最も重要な意思決定は、どこにどのような店を作るかという出店にある。これは飲食店に限らず小売業でも同じで、ましてホテルや商業施設など大型案件では出店こそが経営戦略の要と言っても過言ではない。

商品開発やコストコントロールなどは、経営努力で改善可能だが、一度出店した場所はそう簡単には変えられない。ここが大きな足かせになることがある。

また、店にはお客をもてなすための内装や設備投資が必要だ。勿論家賃も必要で、これらの固定費が決まれば、ほぼいくら売上を必要とするかという損益分岐点は決まる。出店してから儲かるよう考えれば良いという人がいるが、それは間違いだ。出店して開業したときに儲けの構造は決まってしまう。

損益分岐点が高ければ、今回のコロナ禍のような事態になると持ちこたえようが無くなる。 この損益分岐点を下げるポイントは、ひとえに初期条件にあり、家賃、内装工事費、設備など固定賃金を抑えるしかない。

ここに今回のテーマであるゴーストキッチンの強みと課題が潜んでいる。

誰もいない厨房

そもそもゴーストキッチンとは

今更ではあるが、ゴーストキッチンあるいはゴーストレストランとは、イートインスペースを持たずデリバリーを専門にする店のことで、バーチャルレストランあるいはクラウドキッチンといわれることもあるが、日本ではゴーストキッチンが一般的だろうか。

ゴーストキッチンにはいくつかのタイプがある。代表的なものは、自分で客席の無いキッチンだけを持ち、店を出すタイプ。もうひとつは、ゴーストキッチンとして開発された店をシェアして借りるタイプ。そして3つ目が他人(あるいは他社)の店の営業時間外に限定して借りるタイプだ。

3つ目は、日本でも昔からあり、スナックやパブが営業時間外の昼の時間を、喫茶店やカラオケ店として他人に間貸しするもので、その逆もある。横文字になって新しい波のように聞こえるが、間貸しと出前を組み合わせた発展業態である。

ゴーストキッチンのメリット

前述の通り、一般的に飲食店は初期投資が大きく、損益分岐点が高くなり、簡単に退店も決めにくい。一方、ゴーストキッチンは初期投資が小さくてすみ、キッチンをシェアするタイプならば、店や設備の賃借料だけですむ場合もあり、立地の制約を受けずに初期投資が抑えられ、サービススタッフが不要で、店内のメンテナンスや清掃といった業務負担も小さくなる。勿論、サービスが無い分、人件費も低く抑えられるというメリットがある。

ゴーストキッチンの留意点

そもそもデリバリーを頼むのは、なじみの店か知名度あるいはブランド力のある店になる。食べたことも無く、誰がやっている店か、どのようなところで作っているか、がわからない店にいきなり注文するようなお客はそう多くはない。

また、イートインに必要なコストが不要であるものの、デリバリーにかかるコストが発生する。自店で運ぶなら、人手とバイク、燃料費や保険料が必要だ。勿論、デリバリー専門業者に委託すれば、相応の手数料が発生する。

こうしたコストは配達料としてお客から頂ければよいが、消費者の理解が進んでいるとは言えない。配達手数料を意識しない消費者は、よほどリッチか、やむを得ない事情のあるお客。そして、「たまにだからいいでしょ」といった利用頻度の低いお客に絞られてくる。 だが、ハレの食事をデリバリーでという客層は確かにいて、リアル店舗同様、ファンをつかめば成り立つこともある。

一方で、日常的な外食分野で戦うとなれば、競合は一気に増え、手軽に利用できるファストーフード、コンビニ、スーパーと、味、価格、利便性で競い合うことになる。一見メリットが多いように見えるが、ゴーストキッチンで認知度を高め、ファンを増やし、リピートオーダーを獲得して、安定的な経営をするのはそうたやすいことではない。イートインとは異なり、食事をする間に時間経過があるため、それに適した商品の開発と衛生管理に注意することは申し上げるまでもない。

そして大切なのは、注文しやすくすること。各社のデリバリーサービスを使わないならば、自社アプリから予約オーダー、事前決済に対応できるモバイルオーダーを導入するなど、お客の利便性と店側の作業効率を高める仕組みの導入も検討する必要があるだろう。

モバイルオーダーのイメージ

それでもゴーストキッチンには追い風がある

シェアリングエコノミーという言葉をご存知だろう。遊休資産の活用から始まったもので、使わずに空いているものや場所、空間を貸したりすることで、収益を上げるという動きである。

例えば、自宅の駐車場を出勤して空いている時間だけ時間貸しをしたり、自宅の一室を貸し出す民泊もそうである。また、利用者が増えているシェアリングバイクも、シェアリングエコノミーの事例だ。

ゴーストキッチンも、前述のスナックやパブのように、店を使わない時間にキッチンを貸し出したり、シェアオフィスならぬ複数の事業者が、場所を区切ったり時間帯を分けあうシェアキッチンもシェアリングエコノミーの流れで、今後増えてくることが予想される。ゴーストキッチンは、まだまだ進化の途中にある。

自店のイートインサービスの時間を短縮して、デリバリーとテイクアウト専門の時間を作ること。ソーシャルデリバリーといって、職場や近所の人が集まり、代表者がまとめて注文して商品を受け取りに行くことなど。

ゴーストキッチンは、単に場所貸し、設備貸しから、新しい仕組みと組み合わせて成長する可能性は高い。

月刊飲食店経営 毛利 英昭氏

コンサルティング会社に16年間在籍後、2007年4月に独立し(株)アール・アイ・シー設立。外食・小売業界を中心に業務改善やシステム構築分野のコンサルティングと社員教育などを中心に活動。
2015年に商業界から、「月刊飲食店経営」「月刊コンビニ」の出版事業を引き継ぎ、現在は編集長を兼務している。

月刊飲食店経営 毛利 英昭氏

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