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人財を育てる方法

経営コンサルタント伊藤 敏克氏の視点から見る外食産業

2021年4月15日 カテゴリ:コラム

執筆者:ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社 伊藤 敏克

事業は人なり

事業は社員一人ひとりの働きのうえに形成されます。また、多くの経営者は、会社衰退や新規事業の失敗原因として人手不足や人財不足を挙げています。人なくして事業なし、まさに、事業は人なりです。飲食業界は採用難や人手不足に陥っているケースが少なくありませんが、まずは人財を育てることに焦点を当てることが大切です。今いる社員を育てることは誰にでも出来ることだからです。社員を大切な経営資源と考え、社員一人ひとりの特性を理解し、然るべき人財を育てれば、会社は自然と繁栄します。また、人財が育てば、その人財が引き金となって、新たな人財が集まります。

飲食店で働く人

社長が育てば社員が育つ

社員は社長や経営幹部の一挙手一投足を見て育ちます。ですから、社長が育てば、社員は自然と育ちます。よく、会社は社長の力量以上に大きくならないと云われますが、本当にその通りです。社長の成長が止まれば、社員の成長も止まり、会社の成長が停滞します。だからこそ、社長自身が誰よりも熱心に勉強し、成長することが求められるのです。社長が成長するには、自分の苦手分野や会社の脆弱な部分を克服するための努力が欠かせませんが、すべてを背負い込む必要はありません。社員や外部の専門家の協力を得て、苦手分野等を他者に補ってもらいながら成長する方法もあります。そうした社長の努力は、社員の成長スピードを加速させ、事業拡大に欠かせない右腕の育成にも繋がります。

どんな社員を育てたいのか

人財を育てるには、どんな社員を育てたいかを明確にイメージすることが大切です。そのイメージはそのまま上司のあるべき姿になり、さらに、イメージと現実のギャップは育成すべきポイントになります。このギャップを社員と共有すると、社員はどうすれば会社から評価されるのかが分かり、その評価基準を頼りに自己研鑽することができます。このように、社員に対して評価基準を明快に示せば、教育効率が格段に上がります。

なお、社員の評価基準は、相対評価よりも絶対評価をお薦めします。相対評価とは、A君はB君よりも優れている、という具合に社内の能力順位を明らかにする方法ですが、客観性に欠け、主観に偏るので、目指すべき人材像が曖昧になり、なお且つ、不公平な人事評価に陥りやすいです。一方の絶対評価は、社会や業界で広く活躍できる人財像など、社外に評価基準を置く方法です。客観性が高く、目指すべき人材像が明確になり、なお且つ、公平な人事評価ができます。ライバル企業に勝つ人財を育てるには、絶対評価が最も効果的です。

社員のやる気が成長の源泉になる

人財育成で重要なのは、社員のやる気を高めることです。やる気が高いほど、成長のスピードが加速するからです。それでは、やる気の高い人財の特徴が分かりますか?社員のやる気を評価している会社は殆どありませんので、明確に答えられないかも知れませんが、答えは簡単です。やる気のある人の特徴は、心が豊か、プラス思考、変化への耐性が強い、自己依存(自分に原因がある)、自己奮起(自分を奮起させる)、自己責任(他人のせいにしない)、自己評価(陰で自己努力できる)などが挙げられます。簡単に言えば、素直で、謙虚で、前向きということです。社員のやる気を高める方法は簡単です。社長が率先して、素直で、謙虚で、前向きな姿勢で、やる気を発揮するだけです。

やる気の高い人財が成長をけん引する

やる気の高い社員に課題を与えると「はい分かりました。やってみます!!!」という元気の良い返事がすぐに返ってきます。「でも、しかし、それって…」などの否定的な言動はなく、言われたことに誠実にトライします。何もやらないうちから諦めるようなことはせず、障害があっても乗り越えようと努力します。決して、他人のせいにするようなことはせず、誰も見ていないところでも努力します。心が明るく、プラス思考で、変化への耐性が強いので、どんどん進化し、月日が経つほどに成長します。まさに、やる気は成長の源泉です。こうした、やる気の高い人財は会社の宝であり、成長をけん引する強力なエンジンになります。しかも、エネルギー源は自己内にありますので、素晴らしくエコで、極めて高い生産性を発揮します。ですから、やる気の高い人財は、たとえ少数でも、掛け算の効果で、考えられないほど大きな成果を生み出します。

社長の人間的魅力が人財を惹きつける

飲食業界の人財難や人手不足はIT活用や自動化である程度は対処することができますが、人相手の商売である以上、肝心な部分はまだまだ人の力が必要です。それでは、人の力を得るにはどういう努力が必要なのでしょうか。人は理屈ではなく、感情についてくる生き物です。ですから、社長が社員に対して肩書や理屈を並べても本心から従いませんし、理屈っぽくなるほど白けます。

逆に、社長の感情量が豊富なほど、社員は素直に従います。感情とは、情熱、意思、哲学、責任感、ビジョン、器量、度量、審美眼、芸術性(職人技)など等、その人間のあり様を表すヒューマンスキルのことです。このスキルが磨かれるほど、社長の器が大きくなり、人間的魅力と共に、人財を惹きつける求心力が高まります。

求心力はリーダーの必須条件

求心力は、リーダーの必須条件ともいえますが、富、人脈、技能、勇気、励ましなど、与えられるものを社員や顧客に積極的に与えることで高めることができます。他者の幸せを優先する姿勢は、巡り巡って自分の幸せを大きくします。また、他者に与えた幸せが大きいほど、リーダーとしての影響力も大きくなります。社員をコントロールするのは偽物のリーダーです。社員をコントロールせずとも、影響を与えるのが本物のリーダーです。飲食店においては店長がリーダーです。プレイングマネジャーの店長も珍しくありませんが、その場合は、プレイヤーの時は社員の模範となる技能を発揮し、マネージャーの時はヒューマンスキルを発揮すれば人間的魅力がどんどん開花します。そして、リーダーの力量が高まれば、採用難、人手不足などの人事課題は自然と片付きます。

ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社
代表取締役社長 伊藤 敏克氏


ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。中小企業経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・各種税法を習得し、2008年4月に、ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)を設立。会社設立後は、経営コンサルタントとして様々な会社の経営指導を行う。経営者への指導実績は100名以上、経営コラムのメルマガ会員は2,000名以上、あらゆる業種の経営指導実績も多くあり、営業利益20倍、現金残高60倍、キャッシュフロー1億円改善等の指導実績がある。事業再生・再構築の経験も豊富。各業界団体の講演実績も多数。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」

伊藤 敏克氏

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