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企業の衰退と繁栄

経営コンサルタント伊藤 敏克氏の視点から見る外食産業

2021年1月29日 カテゴリ:コラム

執筆者:ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社 伊藤 敏克

企業はなぜ衰退するのか

企業が衰退する根本原因は「経営課題の見落とし・見過ごし・見誤り」に尽きます。経営課題とは、会社の繁栄を阻害する原因のことですが、どんなに小さな課題であっても、課題を見落とした瞬間から衰退が始まります。経営課題を見落とすことで表面化する負の要素は売上減少や赤字転落等がありますが、こうした数字の悪化は、末期症状だと思ってください。重要なのは、数字が悪化する前に先手先手で課題を発掘し、対処することです。飲食業であれば、接客やサービスの低下、料理のクオリティ低下など等、数字の悪化に繋がる課題を決して見落とさないことが大切です。経営課題と真剣に向き合い、克服に努めている会社は間違いなく繁栄しています。

悩むビジネスマン

課題と向き合う姿勢が大切

会社の盛衰は、経営課題と向き合う姿勢ひとつで決まりますが、なぜ、課題を見落とすのかというと、会社のお金が回っていると、それなりの状態で会社経営が続いてしまうからです。日頃の運転資金が銀行頼みの中小零細企業も少なくありませんが、銀行借入や身銭の補てんなどで資金不足を解消したとしても、それは一時的な回避策にしかなりません。このような経営状況に陥っている会社は、お金を回すことばかりに気を取られて、本来考えなければならない「お金不足に至った根本的な経営課題」を見過ごしがちになります。これはギリギリの少ない利益で回している会社にも同じことが言えます。
こうした状況下で経営課題を見落としていては、更なる会社の繁栄、あるいは、赤字から黒字経営への挽回ができないどころか、もっと悪い方へ衰退する可能性が高くなります。

すべての課題は現場に表れる

経営課題は、経営姿勢の誠実度合いや周囲の環境変化と共に絶え間なく生じます。例えば、お客様軽視の姿勢は、サービス低下という課題を生み出し、客離れを招きます。IT化や生産性改善の遅れは、収益性悪化という課題を生み出し、価格競争の激化(レッド・オーシャン化)を招きます。経営課題の予兆は必ず現場に表れます。飲食業であれば、店内の清潔度合い、お料理の出来栄え、お客様の満足感、スタッフの働きぶりなどを観察していれば、大概の課題はキャッチできます。つまり、現場をよく見ている会社ほど、たくさんの課題が発掘・解消されて、繁栄の基礎がどんどん盤石になります。世界最大のファストフードチェーンを創ったマクドナルド創業者のレイ・クロック氏は億万長者になった後も現場に通い続けてマニュアルが守られているか自らの目でチェックしていました。とにかく、衰退したくなければ現場を見ることです。

経営力の向上が繁栄の基礎を築く

企業繁栄の秘訣は経営課題を見落とさないことに尽きますが、肝になるのは経営力です。経営力とは、社長の経営能力、経営管理の精度、経営マネジメント力、事業構想力、人財育成力、マーケティング力など等の会社経営を支える総合的な力のことです。簡単に言えば、経営者と幹部の力量になりますが、この経営力が低下すると経営課題の見落としが頻発し、会社が衰退します。経営力を高めるために有効なのは、経営の勉強を続けることと、経営の客観性を高めることです。経営の勉強は企業研修やセミナー受講だけではなく、市場調査やライバル視察など、リアルな情報に触れることも大切です。飲食業であれば食べ歩きなどが有効です。経営の客観性を高めるには財務状況の見える化や外部アドバイザーの活用が有効です。客観性が高まるほど視野が広がりますので、経営の精度が自ずと高まります。飲食業であればPOSシステムの導入や定期的な覆面調査がお薦めです。

企業の繁栄を支える3つの条件

企業の衰退を予防し、繁栄のスピードを一段と加速させる3つのポイントを紹介します。現金、顧客、社員です。まずは、現金です。会社は現金が無くなった瞬間に倒産します。ですから、現金の動きを意識し、現金を増やし続ける姿勢が繁栄の原則になります。飲食店の場合は、稀に現金商売のスタイルがありますが、ほとんどのお店はクレジット決済(信用取引)が混在しています。
また、飲食の提供に使用する材料等の支払いタイミングもまちまちです。こうなると、帳簿上の損益計算とお金の収支が一致しなくなり、商売の規模が大きくなるほど、現金の動きが複雑化します。万が一、現金の動きを見失うと、黒字倒産という悲劇を招くこともあります。売上よりも利益、利益よりも現金に意識を向けるキャッシュフロー経営の実践が何よりも大切です。
ツールとしてお薦めなのは予算管理と資金繰り表です。この二つのツールがあれば、損益と現金収支のコントロール精度が高まりますので、自然と経営が安定します。数字が苦手であれば、会計システムの導入や会計事務所の協力を得る手もあります。

まだ見ぬ顧客にもアプローチする

顧客の存在も重要です。経営コンサルタントの世界的第一人者であり経営マネジメントの発明者であるピーター・F・ドラッカー氏は企業の目的は「顧客創造にあり」と云いましたが、まさにその通りです。顧客は、事業活動に必要な収益(利益・現金)の源泉だけでなく、経済貢献のモチベーションや働く社員の喜びや生きがいの源泉にもなります。顧客がいるからこそ、商品やサービスが成り立つのであって、事業価値の更なる向上も顧客がいるからこそ前向きに取り組むことができます。顧客創造は、いま目の前にいる顧客に尽くすことはもちろん、いま顧客になっていない潜在顧客を発掘することも不可欠です。毎年一定割合の顧客は常に入れ替わっていると云われていますので、顧客創造は企業繁栄の絶対条件といって過言ではありません。
顧客創造は情報発信が肝になりますが、飲食業であれば、提供する料理と価格がお店の外から分かる仕組み作りと、SNSやホームページを活用した種々の情報発信(営業方針・料理メニュー・コース内容等)は必須です。

社員の先生は社長の一挙手一投足

社員の育成も企業の繁栄に欠かせません。どんなに大きな成果や事業も、元を辿ると一人の社員に行き行き当たります。ですから、事業運営の要になり得る社員を如何に育成するかが企業の繁栄を決定づけます。社員にとっての先生は社長や幹部です。社員は、社長や幹部の一挙手一投足を見て育ちます。立場が上になるほど自分を律し、リーダーシップを発揮することが、有能な社員を育てる秘訣になります。ビジネスは人と人の出会いで大きくなります。ビジネススキルを上げるための学びの成果も、人と人の出会いで決まります。誰とやるか、誰から学ぶかで、何をやるか、何が学べるかが決まり、さらにその環境の熱量やレベルが高いほど、思いもよらぬ成功や大きな成果が生まれます。社員を大切に育む会社が繁栄することは古今東西変わらぬ法則です。事実、繁盛店ほど社員を大切にしています。

経営者のあるべき姿とは

経営者はつくづく孤独な稼業です。社内においては本音で語れる相手はほとんどいませんし、外に出れば「社長さん社長さん」と御世辞や社交辞令が飛び交い、孤独感を解消してくれる相談相手を社外に求めるのも難しいです。場合によっては家族でさえ、心から理解してくれることはなく、このような状況下で社員全員の生活を保証し、独りで業績の責任を背負わなければなりません。業績が不安定だと、独りで不安と向き合うことも課せられ、ここまでくると、社長業ほど割に合わない職業はないのではないか、とも思えてきます。

なにゆえ経営者が孤独なのかというと、会社の頂点に君臨しているからです。経営者は全ての決断の最終執行者であり、最終責任者です。後ろを振り返っても責任を肩代わりしてくれる人は誰もいません。難しい決断が集中すれば悩みも抱えますし、その悩みを放っておくと経営課題が山積し、独りで課題と向き合う羽目になります。決断や執行の終着点に立っている以上、経営者は必然的に孤独な立場に置かれるのです。

社長には素敵なプレゼントが待っている

それでも、辛いことばかりではありません。孤独の代償として凡人には見られない世界に入ることができます。物心両面においても人並み以上の幸せを勝ち取ることができます。金銭的余裕を持ちながら、心の豊かさをどんどん広げることができます。これだけ素敵なプレゼントがあるからこそ、社長の肩書が憧れの的になるのです。

社長の椅子には、選ばれし者しか座れません。勉強や経歴の出来不出来など関係なく、社長になるべくしてなるのが経営者という立場です。しかも、社長業は、会社のなかでたった一人しか経験することができない特別な仕事です。社長業には孤独だからこその醍醐味があります。孤独の中にも楽しみがあります。孤独の代償として豊かなご褒美があります。

どんなに辛くて泣きたい時があっても、孤独の先にある夢や希望を決して諦めないでください。また、何をやってもうまくいかず、孤独に押し潰されそうな時は、周囲に感謝してみて下さい。結果を出すために努力している社員、取引先、関係者、あるいは、会社を支えている顧客、仕入先等に改めて感謝すると、自分が独りではないことに気がつき、前に向かう勇気が湧いてくるはずです。

ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社
代表取締役社長 伊藤 敏克氏


ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。中小企業経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・各種税法を習得し、2008年4月に、ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)を設立。会社設立後は、経営コンサルタントとして様々な会社の経営指導を行う。経営者への指導実績は100名以上、経営コラムのメルマガ会員は2,000名以上、あらゆる業種の経営指導実績も多くあり、営業利益20倍、現金残高60倍、キャッシュフロー1億円改善等の指導実績がある。事業再生・再構築の経験も豊富。各業界団体の講演実績も多数。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」

伊藤 敏克氏

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