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外食産業に訪れる新しい未来

経営コンサルタント伊藤 敏克氏の視点から見る外食産業

2020年12月25日 カテゴリ:コラム

執筆者:ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社 伊藤 敏克

わたしは幅広い業種の経営サポートをしていますが、外食産業は、このたびの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の打撃を最も受けた業種といっても過言ではありません。景気の先行きが不透明な中で、多くの消費者は外食の出費を控えています。大きな外食需要を占めていた国内観光客や訪日外国人(年間3,000万人強)は激減し、接待や宴会等の需要もほとんど無くなりました。テレワークの定着、あるいは、外出制限や時短営業等の影響で外食の生命線になる集客にも支障が出ています。売上の減少幅は過去に例がないほど落ち込んでおり、前年対比8~9割ダウンも珍しくありません。しかも、それらの悪影響は長期化しており、未だに先行きが不透明です。

街中でマスクをする人々

さらに、業界の特性として、もともとギリギリの黒字経営や常態的な赤字経営に陥っている店舗や企業が多く、資金的余力がなかったことも危機的状況を生み出した要因として考えられます。厳しい現実ではありますが、立地、ジャンル、顧客ターゲットによっては、もはや、通常の経営改革では修復困難なレベルにまで、従来成り立っていたビジネスモデルが崩壊しつつあります。中小零細ばかりではありません。大手外食チェーンですら数百店舗規模の閉鎖を余儀なくされていることから、COVID-19が外食業界全体に与えた負の影響がいかに大きいものかお分かりになると思います。

この未曽有のCOVID-19不況から脱却するために抑えるべきポイントは3つあります。出口を明確にすること、正攻法ですべき事をやり尽くすこと、変化変容を受け入れて常識を超えることです。

出口のタイミングを明確にする

まずは出口です。日本政府の菅義偉首相は「来年上半期まで全国民がワクチンを接種できるようにする」と明らかにしています。ワクチン接種が始まれば徐々に社会生活が回復に向かいますので、来年2021年6月を出口のタイミングとして仮定することができます。出口が決まれば、それまでの期間を如何にして凌ぐかに焦点を絞ることができます。事業は現金が無くなった瞬間に破綻しますので、最優先すべきは資金繰りです。COVID-19関連融資が充実していることもあって、資金調達のハードルは著しく下がっています。融資条件も有利な条件が多いので、最大限活用することをお薦めします。どう考えても資金繰りが破綻する見通しであれば、無理に事業を続けず、一旦、事業を止めて、再出発するのも出口戦略の一つになります。

今できることをすべてやり尽す

続いて、正攻法ですべき事をやり尽くすことです。移動時の感染リスクが低い近隣住民への宣伝、出前、テイクアウトの提供はとても有効です。近隣住民の支持を得られれば、事業の継続性は格段と高まります。また、種々のCOVID-19対策(換気・加湿・間隔・予約制・交代制・少人数制・ドライブスルー等)に加えて、生産性を高めるIT化(セルフオーダー・キャッシュレス化・混雑状況の見える化・業務システム化・最新技術やノウハウの取り込み等)、集客効果を後押しするSNS活用による情報発信などの取り組みも重要です。これらの取り組みは何れも即効性があり、なお且つ、社会生活が正常に戻った時に、効果が一段と開花します。なお、成長企業や成長産業ほどこれらの取り組みが定着しており、高い収益性の源泉になっています。

非常時には非常識な一手が有効になる

最後は、変化変容を受け入れて常識を超えることです。通常の経営改革では修復困難なレベルにまで崩壊したビジネスモデルを立て直すには、時には常識から外れたことにチャレンジすることも必要です。経営資源を最大限に活用するアイデアは沢山あります。Webを活用した物販・通販・料理教室等、料理スキルを活用した出張料理・ケータリング等、閑散期を狙った早朝営業や深夜営業等、健康食・美容食・ダイエット食を武器にしたヘルスケアサービスの展開、コワーキング・ギャラリー・イベント向けのスペース活用など等、常識の枠から外れた取り組みに活路を見出す手もあります。効果がなければ元に戻せば良いだけのことです。トライ&エラーを繰り返すことで従来のビジネスモデルが進化することもあり得ますし、非常時には非常識な一手が有効になることが往々にしてあります。また、数ヵ月営業を休んでメニュー開発に専念する、あるいは、収益構造やビジネスモデルを再構築することも長い目で見れば成長の糧になります。

今は新たな成長ステージに進むためのチャンス

外食産業は他に比べると圧倒的逆風の中に置かれていますが、打つ手が全くない訳ではありません。大切なことは現実を直視し、今すべきベストなことを見極め、最適な戦略を選択し、直ちに実行することです。立ち止まって傍観しているだけでは現実世界は何も変わりません。今の努力が明るい未来を創ることを信じて、実行することが一番大切です。この危機を乗り越えることが出来れば、以前とは比にならない強固なビジネスモデルと収益基盤が確立されます。新たな残存者利益も生まれます。利益水準が上がることで返済も無理なく進みますし、事業の永続性も高まります。COVID-19不況によって一定の淘汰は避けられないかも知れませんが、外食業界全体で捉えればピンチではなく、新たな成長ステージに進むためのチャンスともいえます。どんなビジネスにも通ずることですが、ピンチをチャンスと捉えて目の前のビジネスに全力で取り組み、顧客の幸せを叶えることができれば、更なる飛躍が必ず見えてきます。

ビジネスコンサルティング・ジャパン株式会社
代表取締役社長 伊藤 敏克氏


ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)代表取締役社長。業界最大手の一部上場企業に約10年間在籍後、中小企業の経営に参画。中小企業経営の傍ら、法律会計学校にて民法・会計・各種税法を習得し、2008年4月に、ビジネスコンサルティング・ジャパン(株)を設立。会社設立後は、経営コンサルタントとして様々な会社の経営指導を行う。経営者への指導実績は100名以上、経営コラムのメルマガ会員は2,000名以上、あらゆる業種の経営指導実績も多くあり、営業利益20倍、現金残高60倍、キャッシュフロー1億円改善等の指導実績がある。事業再生・再構築の経験も豊富。各業界団体の講演実績も多数。主な著書「小さな会社の安定経営の教科書」

伊藤 敏克氏

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