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『肉山』はなぜ予約が取れない名店になれたのか。
光山氏が考える「儲け」の本質とは。
予約が取れないと有名な「肉山」オーナー光山氏の連載コラム 第2回 2020年07月07日 カテゴリ:コラム
執筆者:株式会社個人商店 代表取締役 光山 英明氏
繁盛していない店ほど原価のことを気にしてしまう
『わ』を始めてから9年目、意図的に月に2〜3日しか店に顔を出さないようにしました。自分でもちょっと飽きていた部分があったのかもしれません。1年間、あえて色々な店を食べ歩いたりして遊んでみました。そこから得るものがあるかもしれないと思ったんです。結論から言えば、特に得るものはなかったですね。むしろ、お金が出て行くばっかり(笑)。こんなことをしていてはいかん、新しく何かを始めようと思いました。それで2012年にオープンしたのが『肉山』です。
迷ったのは業態。ホルモンはお客さんが焼いて食べる。だったら、新しい業態では最終料理まで店でやって、お客さんは食べるだけの焼肉屋にしようと決めました。『わ』を始めてから10年。最初の頃のお客さんのなかには、足が遠のいている人もいた。そんな人たちに戻って来て欲しいという気持ちもありました。『わ』に比べると少し高くなるけど、みんな大人になっているし大丈夫かなと思って金額を設定。高いといっても、コースで一人5000円なんですけどね。
飲食店経営に関する話ですし、金額を出したら原価率が気になるかもしれません。それで言うと、正直、あまり考えていません。本質的には、利益がでていれば問題ない。個人的には、原価を気にしている店ほど繁盛していないと思っています。来客数が目標に達せず利益が出ていないから、原価が気になるんです。逆に、お客さんがしっかりと入っている店は利益がでているので、原価を気にしすぎないはずですよ。
もうひとつ、宣伝方法についてもお話しします。『肉山』で活用しているのは、Facebook。
「宣伝したい」とか「いいね!の数を増やすぞ」と思って投稿すると、1000いいね!位を狙って取れるようになってきました。
Facebookのアルゴリズムは分かりませんが、私の経験上、いいね!を増やすコツがあるんです。まず投稿を公開にします。そして、自分で自分の投稿にいいね!を押す。自分がアップした投稿が必ずしも友達全員のニュースフィード*に上がるわけではありませんが、自分で自分の投稿にいいね!を押すと、その確率が高くなると感じています。
さらに、僕の投稿にいいね!を押してくれてコメントを付けてくれる人がいたら、そのコメントに更にいいね!を押してコメントを返します。それをやると宣伝したい投稿がずっと生きている状態になる。もし、コメントが止まったら、また自分でいいね!を押してもう一度動かします。それの繰り返しで、宣伝したい内容をFacebook上で飛ばしまくります。あとは、アップする時間。宣伝したい内容は、平日は10:00、土日祝日は14:00って決めています。経験上、この時間が最も反響がありますね。

このやり方だと、友達が沢山いないと効果が薄いと思いますよね。確かに、僕のFacebookは、友達5000人います。どうやったら友達が増えるのか。僕の場合は、結果的に増えたという感じです。強いて言えば、『肉山』での肉の提供の仕方が良かったのかも。木箱にその日に焼く分を詰めてお客様に見せるのですが、これが写真映えするから、みんな撮影するんです。多分、その当時は日本一写真を撮られた肉屋のおっさんでしたよ。写真を撮った人は、結構、友達申請してきてくれる。ただね、これはノウハウではないんです。形だけ真似してもダメ。根底、楽しませたいという気持ちがあってこそ、結果として上手くいったと思っています。
*ニュースフィードとは、ホームページの中央に表示される最新の記事のリストのこと。ステータスのアップデート、写真、動画、リンク、アプリでのアクティビティ、利用者からのいいね!、Facebookでフォローしているページやグループの情報が表示される。
ニュースフィードに表示される投稿は、友達や家族をはじめ、関心を持っている人、場所、物事とのつながりを保てるよう考慮されており、上部に表示される投稿は、Facebookでのつながりとアクティビティの影響を受ける。また、投稿へのコメントやいいね!、リアクションの数、記事の種類などに応じて、ニュースフィードの上部に表示される可能性が高くなる。
例えば、ほかの友達の写真や近況アップデートに友達や家族がコメントやいいね!をした場合、友達がシェアしたパブリッシャーの投稿に誰かがリアクションした場合、複数の人が動画やニュースフィード記事についてコメントし、それぞれに返信している場合などは、ニュースフィード上部に表示される可能性が高まる。

出資もフランチャイズも欲張りすぎると必ず失敗する
『肉山』は私がやっている吉祥寺の直営店だけでなく、2015年からはフランチャイズでも展開しています。フランチャイズの支払いは、加盟金が250万円で月々3万円。肉の仕入れ先なども紹介しますが、直接取引をしてもらうので、うちが中抜きすることはありません。フランチャイズにしては、月々の支払いも少ないし、材料調達などでも利益を上げていない。正直、僕としてはほとんど儲からないですよ。たまに、「なんのためにやってるんですか?」と聞かれますが、「ええかっこしいでやってる」と答えています(笑)。
フランチャイズの加盟にはルールがあります。ひとつは、各都道府県にオーナーは一人だけ。同じ『肉山』のオーナー同士で争って欲しくないんです。もうひとつは、オーナーは元々の知人のみ。募集は一度もしたことがありません。常連さんや食べに来てくれた方、友人などが、「自分もこんな店を開きたい」というときに、看板を貸している感じです。今でも、Facebookなどで「自分も肉山を開きたいです」とメッセージが来ますが、お断りしています。
『肉山』のフランチャイズ以外には、エンジェル投資みたいな感じで、これから世に出ようとする料理人の応援もしていますね。まあ、投資といってもまったく儲からないので。足長おじさんという表現のほうが近いかもしれません。今、投資しているのは、天ぷらと餃子、そしてパリのレストラン。『天ぷら あら垣』とパリの『ラルケスト』は、ミシュランで星を獲得しました。
出資する決め手を聞かれるのですが、特にルールがあるわけではありません。例えば、『天ぷら あら垣』は知り合いと食事にいったときに、料理人の新垣要さんを紹介されました。お話ししているときに、「中学を出て和食の世界に入り、ずっと行儀見習いをやっていました」という言葉が出たんです。この行儀見習いという言葉にやられた。この人は信用できると思いましたね。
『ラルケスト』は伊藤良明というシェフがやっているのですが、元々、出店を応援しようといったグループがあったんです。そこで集まった資金で足りない分の1000万円を僕が出資しました。実は、そのときは一度も会ったことがなく、やりとりはFacebookと電話だけ。電話の対応や店のコンセプト、何千万円も身銭を切っていることなどから、こいつは飛ばない(逃げない)と信じることにしました。なにより、Facebookの顔写真が信用できた(笑)。
今のところ、フランチャイズでも出資した店でも、赤字でダメになったことはありません。まあ、僕は儲かってないから、そういった意味では成功かどうかはわからないけど。ただ、失敗するパターンは分かっていますよ。それは、お金を取り過ぎること。売上げの○%とか、欲張るとダメですね。潰れます。潰れたら、なにも貰えないですからね。

株式会社個人商店
代表取締役 光山 英明氏
1970年、大阪市生野区生まれ。上宮高校野球部から中央大学野球部。中央大学時代は寮のある吉祥寺周辺が生活の拠点となる。大学卒業後、大阪で卸酒屋に就職。約10年勤めた後に脱サラして上京。2002年11月、吉祥寺で『ホルモン酒場焼酎屋わ』をオープンする。2012年11月には赤身焼肉の『肉山』をオープン。2015年からは、フランチャイズ展開やプロデュース、出資などを初めて、現在までに約60店舗を手掛ける。『肉山』は予約が取れない有名店へと成長、手掛けた60店舗もほぼ全てが黒字となるなど、その経営手腕には定評がある。

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