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人手不足に取り入れるDX化のカタチ

10,000店舗の飲食店に携わってきた分析コンサルタントが語る「飲食店DX」について

2022年08月23日 カテゴリ:コラム

執筆者:株式会社Fun and Pride 代表取締役 前村 佳槻氏

タブレットレジ・モバイルオーダーの活用

飲食店がDX化を行う目的は導入側によってそれぞれだが、人手不足解消も理由の一つだといわれている。以前はPOSレジやテーブルオーダーシステムのような機能は、個人店や小規模な飲食店では導入コストがかかりすぎる理由などから、使用することができなかった。

しかしこういったサービスも、タブレット型のレジやモバイルオーダーシステムなどの低コストで活用できるサービスの増加により、店舗の規模にかかわらず、経営に関するデータ収集や分析に割かれていた人員コストの削減、またオーダーを取りに行くオペレーションなどを軽減できるというメリットが受けられるようになっている。

タブレットレジ、モバイルオーダー

このようなデータをいかに経営に活かせるかが重要になってきており、正確に経営に取り入れるには、これまでと違った新しいスキルが要求されることだろう。あるいは今後はAI等が全てのデータを分析し、メニューの出数の傾向から、新メニューのラインナップ候補を提示してくれる形など、オペレーションで得られた情報を未来の経営に活用する仕組みが構築されていくかもしれない。

まずは導入をどうするかの段階で足踏みしている飲食店も多くいるとは思うが、DX導入のハードルは、コストの面からみても今やそう高くない。うまく活用できれば次の世界が見えてくる可能性はあるだろう。

最近多く見かけるようになった配膳ロボット

ファミレスなどを中心に、最近よく配膳ロボットを活用している店舗を見かけるようになった。目的はやはり、人手不足の解消が大きいだろう。
では、配膳ロボットを導入するとどんなメリットがあるのか?

まず一つは人が持てる量以上の配膳を一回で行うことができる。これはバッシングも同様である。配膳ルートもロボットが記憶しているため、スタッフはボタン一つで作業が完了する形である。同時に複数のテーブルへの配膳も可能であり、提供スピードが効率化されるメリットもあるという。

ある店舗で検証したデータを見ると、テーブル回転率が16%も効率化し、スタッフの歩数が最大4割も減少したとのことだ。このように、労力は削減され効率がアップするなど、配膳ロボットの導入が非常にプラスに働くケースも多い。しかし、店内が段差の多い形状になっていたり、通路の狭い店などでは利用が難しいというデメリットも考慮する必要がある。今後はドローンなどが配膳を行う形も出てきそうだ。また、こういったDX機能ありきの店舗設計を行い、従来の人件費を大幅に削減した業態も現れてくるだろう。

ロボットにはメンテナンスの必要はあるが、急な体調不良による休暇などがほとんどないことや、計算された動きを大きく下回ることが少ないことから、能力計算を行いやすい特徴がある。どの分野もそうだが、飲食店にとってもロボットとの協業がどのように成長していくのか非常に楽しみである。

配膳ロボット

どこまでできる?ロボット料理人

先日、カフェ・バールのチェーン店で、パスタを自動で料理するロボット料理人を導入したというニュースが話題になっていた。料理人の仕事がロボットで全て代用できるようになれば、経営の幅が大きく広がることだろう。身近なところでいえば、回転寿司のシャリ玉なんかはずいぶん前からロボットが担当していた。面白いのは、年月を重ねてロボットが握る寿司のクオリティがどんどん上がってきているというところだ。色々と調べてみると、既に長年腕を磨いた寿司職人レベルの、ふわふわで口の中でほどけるような食感に仕上げられる技術も持っているという。そうなると、寿司を活用したさまざまな業態を展開できることになり、フレンチのフルコースの最後に本格的な寿司が出てくるなど、体験したことのない世界も現れるかもしれない。

ロボット料理人について、先日知人を通じて知り合った方が面白い話をしていた。
ある飲食店オーナーがレストランを経営していたのだが、職人である料理人と人間関係などで上手くいかず、経営がとても不安定になっていたという。オーナーである彼は料理人ではなかったため、急に辞めたり、気分によってクオリティが上下するような職人達のカバーを十分に行えず、トラブルが発生した日などは、急にお店を閉めなければならないことも少なくなかったという。経営的に大打撃を受けるのみならず、お客様に対しても非常に迷惑をかける事態になっていたそうだ。

そういったことを経験し、彼は調理を行う担当をロボット化すればこういった問題が解決するのではないか?と考え、自身で料理人ロボットの開発に踏み切った。試行錯誤は繰り返され、研究を重ねた結果、炒め物を中心とした作業ができるロボット料理人を完成させた。そのロボットは全てのお皿でレシピ通り、同じクオリティでブレのない安定した一品を提供できるようになっているといい、調理のスピードも早く、オーダーから仕上がりまで3分で完成するという。

そのロボットを開発したオーナーは、その後4店舗のロボットレストランを展開しており、ファストフードのような店舗から、フルサービスのレストランまで経営を行っている。私が驚いたのは、このオーナーが経営する店舗の1つで、料理人が全てロボットのフルサービスのレストラン店舗が、世界的に有名な某グルメガイドブックにおいて、コストパフォーマンスの良い良質な店に与えられる評価を得ている。つまり、味としても一定水準以上の評価を得ているということである。ロボットが作る料理で味としても認められ、スピーディに安定した料理を提供できるとするのであれば、まさに飲食店のDX化をしても、非常に価値のある内容だと感じた。

調理ロボット
※画像はイメージです

将来的に、一流と呼ばれる料理人の中には、ロボットを活用し自身の発想と技術を料理ロボットへアウトプットすることに長けているような人間が現れたり、あるいは各料理の売れ行きや、人気レシピランキングから割り出されたデータや評価の分析を行い、それを自身の持っている技術や知識、ノウハウでロボットへインストールさせることで、安定的に表現できる人間などが、新しいジャンルとして認識・評価されるような日が来るのではないかと感じずにはいられない。

ロボット料理人をどう活用してどのような立ち位置でチーム参加させるのか?これは飲食店のDX化において大きなポイントにもなってくるように思う。

株式会社Fun and Pride
代表取締役 前村 佳槻氏

料理人としてキャリアスタート、その後14年間、料理人・バーテンダー・サービススタッフとして飲食店の現場第一線に身を置きながら新規店舗立ち上げや、メニュープロデュースなど、リアル店舗の0→1を作る仕事を行う。その後、食を中心としたIT広告企業へ移る。飲食店をweb視点と自身の経験による現場視点の両方で分析、各店舗の強みや狙いを活かしたマーケティングで、延べ10,000店舗以上の売上改善のお手伝いをする。また、食のデジタルマーケティングにも取り組み、飲食店がクラウドファンディングを仕掛けるためのビジネスモデルの立案や、サブスクリプション型飲食店の業態開発などのお手伝いを行う。コロナ禍で急加速に拡大するデリバリー・テイクアウトの中食業界にもいち早く参入し、ウーバーイーツや出前館などのデリバリーアプリ上でどうすれば注文率の向上が見込めるか?を研究・分析し、マーケットインの視点で40業態以上を開発。現在では飲食店の開業支援やVRの開発、新ブランドの立ち上げやビジネスモデルの立案など飲食業界の新たなキャッシュポイントを創出するコンサルティングを中心に活動している。

株式会社Fun and Pride 代表取締役 前村 佳槻氏

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