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佐藤と高感度カメラ佐藤と高感度カメラ

諦めない心が技術を進化させる 高感度カメラ開発の軌跡

2025年10月1日

肉眼では何も見えないほどの暗闇でも鮮明な映像を映し出す技術を備えた高感度カメラは、防犯や防災、医療、研究といった幅広い分野で社会を支えています。低ノイズ化機能を搭載した新モデルの高感度カメラを2025年10月1日に販売開始し、製品ラインアップがさらに充実しました。

これまで20年以上にわたり高感度カメラの企画や開発支援に携わってきた社員へのインタビューを通して、この技術にどのような物語があったのかを紹介します。

阿蘇山 中岳の火口に設置した超高感度カメラ

超高感度低ノイズカメラによるホタルイカの身投げ撮影

マーケティングから最前線へ

「お客様の声をどう形にするかを常に考えている」と語るのはパブリック事業部門メディアソリューション統括部の佐藤。その情熱と探求心は、入社以来さまざまな部署を巡り、マーケティングでの市場調査、営業での直接の顧客対応を積み重ねる中で育まれてきました 。 学生時代は電気工学を学びテレビの開発に携わりたいと考え、入社を決めたといいます。長年のものづくりへの強い思いが実を結び、その後開発にも携わりました。「スーパー超高感度カメラ(NTSCアナログカメラ)」の開発をし、これが当時の埠頭監視市場でシェア100%を獲得するなど、一世を風靡。さらに国のスマートシティ推進事業にも参画し、都市の防災対策や観光データの利活用など、多様な分野で活動の幅を広げてきました。

パブリック事業部門 メディアソリューション統括部 佐藤 剛幸

お客様の声から生まれた新機能

今回の新製品には「環境適応型画像最適化機能」が搭載されています。この機能について、佐藤はお客様からの声が機能追加のヒントになったと話します。お客様と現地でデモを行うことで、いくつかの課題が明らかになりました。通常、カメラの設定はオートで行われ、一度設定すれば自動で動く仕組みです。これにより、導入後はお客様が何も触らなくても、昼夜問わず24時間きれいに撮影できます。しかし、この高精度を保つためには、お客様の使用状況や環境を理解し、現場で確認することが不可欠です。佐藤は、「コストを削減しても、きれいに映らなければ導入する意味がありません。そのため、私たちはデモを非常に大切にしています。実際、デモを通してお客様の言葉から機能追加のヒントを得ることが多いのです」と振り返ります。

屋外監視を完全に自動化するためには、環境適応型AIの開発が不可欠です。現場の環境は常に変わり続け、時間によって光の条件が異なり、天候も変動します。毎回手動で設定を変更することは可能ですが、お客様にとっては大きな負担となります。 そこで役立つのが環境適応型AIです。この技術を使えば、環境の変化に応じてシステムとカメラが自動で連動し、設定変更を行うことで、お客様が手間をかけずに快適に利用できるようになります。この機能は、朝昼晩の天候の変化に応じて自動で最適化され、利用者が細かな設定をすることなく鮮明な映像を得られる仕組みです。まさに現場の声を反映し、技術が磨かれてきた証といえます。 一方で、営業現場では「高額すぎる」と門前払いされることも少なくありませんでした。それでも佐藤は諦めませんでした。国の施策や業界の動向を調べ、顧客に「未来の当たり前」を示すことで、単なるカメラの更新ではなく「10年先を見据えた投資」として提案を重ねてきました。最初は反応が薄い顧客も、やがて「そこまで言うなら」と耳を傾け、信頼関係が芽生えていき、「このやり取りこそがやりがい」と佐藤は語ります。

こうして培われた技術は、監視・防災といった社会インフラから、半導体製造や生命科学研究といった新しい分野へと広がっていきました。暗闇の中で細胞を観察する「ライフイメージング」など、かつて想像もできなかった応用が現実となりつつあります。

ボックス型単体カメラ

ボックス型単体カメラ

旋回台一体型カメラ

旋回台一体型カメラ

AI・ドローンとの融合が広げる新たな可能性

佐藤が今目指しているのは、カメラ単体ではなく「他の技術との融合」です。 少子高齢化により監視人員が減少する社会では、カメラとAIの連携による自動化が不可欠となります。すでに画像処理企業との実験を進めており、「高感度カメラ×AI」によって、これまで人間が判断していた異常検知を機械に任せる試みが始まっています。 また、ドローンとの組み合わせにも大きな可能性を見出されています。従来はポールに設置するだけだった監視カメラも、ドローンに搭載すれば自由に移動が可能になります。平常時の巡回から災害時の被災地確認まで、幅広い活用が期待されます。現在すでに複数のドローンメーカーと連携実験を開始しており、将来的には「空飛ぶ高感度カメラ」がインフラの一部となるかもしれません。 「カメラは単なる“目”でしかありません。それを何と結びつけるかで、本当の価値が生まれるのです」と佐藤は語ります。

佐藤さん
カメラの可能性について話す様子

信念が導く未来

佐藤の歩みは、一貫して「諦めない姿勢」と「社会の役に立つ技術を届けたい」という信念に支えられてきました。その結果、時に数年越しで大きな成果をつかんできました。 20年前、埠頭監視の分野でシェア100%を獲得した「スーパー超高感度カメラ」。その夢はさらに広がり、いまではAIやドローンと結びつく新しい未来が描かれています。 佐藤の挑戦はまだ終わっていません。暗闇に光を見出す高感度カメラのように、その信念はこれからも技術と社会を照らし続けていきます。

本コラムでは、カメラ市場における当社の取り組みと、製品開発に込めた情熱をお伝えしました。NECプラットフォームズは、お客様の多様なニーズに応えるため、技術革新を追求し、挑戦を続けています。これからも強みを活かし、安全・安心・公平・効率という社会価値の創造と持続可能な社会の実現に取り組んでいきます。

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