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コンパクトボックス型コントローラ
AMD Zynq™UltraScale+™ MPSoC搭載モデルメインボード 導入事例
株式会社DONKEY 様

内観内観

各種制御に必要な複数機能を集約し、中小規模農業事業者向けスマート農業ロボットの実用化をサポート

業種:製造業 業務:開発・製造・販売 製品:コンパクトボックス型コントローラ

事例の概要

課題背景

  • 農業ロボットにおけるAI制御のリアルタイム処理を安定的かつ確実に実現したい

  • 限られた組込みスペースに対応するため、搭載機能の集約と小型化を図りたい

  • 屋外で使用するバッテリ駆動の農業ロボットのため、消費電力を抑えたい

  • 中小規模の農業事業者も導入しやすいよう、販売価格を抑えたい

成果

デバイス変更により複数機能を集約し、各種制御の高速化と安定処理を実現

GPU(Graphics Processing Unit)からFPGA(Field Programmable Gate Array)に変更したことで、エッジAI(クラウド上ではなく、デバイス近くのエッジ部分に実装したAI)による物体検知のほか、カメラ画像・映像などのリアルタイム処理を実現

メインボード単体での提供により、省スペース化に寄与

複数のマイコン機能も集約でき、限られたスペースへの組込みが可能に

農業ロボットの低消費電力・低発熱化に貢献

FPGAの特性により実動20W以下の低消費電力を実現。消費電力と発熱を抑えることで、屋外環境下でのバッテリ稼働を実現

  • 本数値は、当社デモ実行時の参考数値です。動作状態によっては20W以上になる場合があります。

開発の柔軟性や長期の製品供給体制を構築

FPGAの柔軟性を活かし、臨機応変な開発体制を構築。また、コンパクトボックス型コントローラ AMD Zynq™ UltraScale+™ MPSoC搭載モデルは長期供給(発売から5年間)のため、安定した製造体制と後継機への継続性を担保

システムイメージ

システム構成図

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事例の詳細

導入前の背景や課題

農家の“お困りごと”解決を目指し設立

2023年の日本における農業従事者は約116万人と2000年比で半減し、さらに年齢構成のピークは70歳以上層が半数(58.7%)以上、次世代の担い手となる60歳未満層は全体の2割(20.4%)にとどまるなど※、日本の食を支える農業分野の高齢化・人手不足は、年を追うごとに深刻化。これらの問題解決に向けて、政府はAI(人工知能)やロボット、IoT等によるスマート農業技術を導入し、生産性向上等を図ることを打ち出しています。

株式会社DONKEY様(以下、DONKEY様)は、株式会社日本総合研究所が提唱した「農業者みなが儲かる農業 = 『Agriculture 4.0』」に共感した大学や企業の有志によるコンソーシアムをベースとする、スマート農業を支援する農業ロボットシステムの開発企業です。中山間地域で栽培される果樹類や収穫作業の負担が大きい施設栽培、露地栽培も含めて、中小規模農家における農作業の軽減化を目指し、2020年3月に設立しました。

  • 出展:農林水産省 『令和5年度食料・農業・農村白書』

ニーズを網羅する機能搭載を模索

同社が開発しているスマート農業ロボットは、電動台車をベースとし、農作業者の位置を認識し一定の距離を保ちながら自動追従・自動走行する機能を搭載しています。農具の持ち運びや収穫物の運搬といった間接作業をロボットが担うことで、農作業の負担軽減・効率化を図ることを目指しています。また、果樹園のような山間部の圃場や畑から集荷場の間に段差があるような状況においても、スムーズかつ安定走行できるように四輪駆動仕様になっています。

2021年3月、同社の取り組みは農林水産省「令和3(2021)年度スマート農業実証プロジェクト」に採択され、実際に農園で実証実験を行いました。その結果、トマト農園の収穫運搬作業では作業時間が2割、ナシ園での草刈り作業時間については7割削減できることが確認できました。

スマート農業ロボット

実用化に向けて、精度や価格面で課題

株式会社DONKEY 代表取締役社長 須藤 泰志 氏
株式会社DONKEY
代表取締役社長
須藤 泰志 氏

これらの実証事業に加えて、全国の農家へのデモンストレーションによる営業活動やデモ機の利用を通じて、要望が一番多いのは追従機能であることがわかりました。また、収穫や草刈りといった農作業中のリモコン操作は、作業工程がひとつ追加されることになるため、工程を増やさず作業を軽減するには安定的かつ確実な追従・自動走行が求められることも明確になったといいます。同社 代表取締役社長 須藤 泰志氏は「我々が目指している農作業の軽減化と現場ニーズが合致していることを再確認するとともに、同機能の精度を高める必要性を感じました」と話します。

同社が開発した農業ロボットは、台車の前後にカメラを搭載し、追従機能をGPU搭載のエッジAIで制御。自動走行にはGNSS(衛星測位システム)を使って正確な位置情報を把握することで、農作業者との距離を一定に保ちながら集荷場まで収穫物を無人で運びます。しかし、周辺機器を含めた複数機能をGPUで高速処理するには限界があり、さらに、開発期間中に半導体不足や資機材価格の高騰が起き、最終価格が大幅に上昇する可能性がありました。

そこで、価格を抑えつつ、安定的かつ確実な物体検知機能と追従や走行機能の自動化を実現するシステムの調査・検討を開始。既存の農業ロボットにてシステム提供を受けているメーカーに加え複数社に相談し、その中の1社がNECプラットフォームズでした。

選択のポイント

設計支援とアフターフォローが決め手

株式会社DONKEY 技術部 貫井 美尋 氏
株式会社DONKEY
技術部 貫井 美尋 氏

NECプラットフォームズから提案したのは、プログラムデータが書き換え可能な集積回路・FPGAが実装されたコンパクトボックス型コントローラ AMD Zynq™ UltraScale+™ MPSoC搭載モデル。用途に応じて使用回路を増減できるなど開発段階の利用に柔軟性があり、複数のデータを並列処理することでリアルタイム性能を実現できることが最大の特長です。

DONKEY様が開発する農業ロボットには、画像処理などのAIに特化した機能以外にもモータ駆動やライト点灯、重量計測といった周辺機能も制御する必要がありました。同社 技術部 貫井 美尋氏は「メイン機能以外の複数の周辺機能も集約できるだけでなく、データ処理速度が向上すること、さらに消費電力が低いことも魅力でした」と話します。また、他社の提案はハードウェアのみが多かった中、「FPGAの設計に不慣れな我々としては、ソフトウェアの設計支援があることに安心感があり、それが最大の決め手となりました」と振り返ります。

導入後の成果

機能集約・低遅延・省電力化を実現しリアルタイム処理がスムーズに

本製品の採用により、AIによる画像処理機能や前述の周辺機能に加え、カメラやセンサ、ネットワークといった周辺機能もFPGAに集約し制御できるようになりました。
またFPGAの実装により、開発現場におけるさまざまな課題の解決につながりました。貫井氏は「試用現場では想定外のことが発生しますし、制御する内容も多岐にわたります。それらの課題は、FPGAを採用したことによって一つひとつ柔軟に対応・解決することができましたし、開発設計段階でサポートをいただけたことは非常に助かりました」と話します。

コンパクトボックス型コントローラはデバイス自体が小型なため、農業ロボットの台車にある取り付けスペースにもコンパクトに収まり、台車本体に設置する部材数量も削減。さらに、FPGAの特性により消費電力も実動20W以下と低いため、消費電力と発熱を抑えることで屋外環境下でのバッテリ駆動も可能なほか、バッテリ消費や交換時期への影響も抑えられるようになりました。価格面についても、他社提案を採用した場合と比べて1~2割抑えることができたといいます。

スマート農業ロボットが動いているようす
農業ロボットが作業者に追従しているようす

安定供給下での開発推進

スマート農業ロボットという特性上、発売以降も機能追加や改良を継続して行うことになります。コンパクトボックス型コントローラは、5年という長期供給体制に加え、FPGA は15年以上の供給実績があることから、安定した製造体制と後継機への継続性が担保できました。

他分野展開も視野

株式会社DONKEY 営業部 佐藤 裕一 氏
株式会社DONKEY
営業部 佐藤 裕一 氏

2024年9月にリリースされた製品は、大学を中心とした研究機関への納入が決定しました。今後の製品ラインアップについては、「果樹園、施設園芸(ビニールハウスなど)、路地栽培向けなど、ジャンルに応じた仕様をそろえるとともに、アタッチメント類も拡充し多様な利用シーンに対応したいと考えています」と営業部 佐藤 裕一氏は話します。販売方法も、購入(買取)だけでなく、リース・レンタルも視野に入れているといいます。全国での生産・販売ルートの開拓を順次進めながら、各地で農家のみなさまへのヒアリングも続け、さらに改良を重ねていく予定です。

機能面については、現在搭載されているセンサは重量計測センサのみですが、「例えば畑の温湿度や土壌成分のモニタリングなど、センシング機能の充実化やそれらデータの分析機能、またドローンといった他機器との連携など、自社開発・他社連携を組み合わせながら活用できる範囲を拡大していきたい」と須藤氏。

さらに、工場内やレジャー施設などでの機械器具類の運搬、鉄道の点検業務、災害現場での利用など、他の産業分野・状況での活用も想定され、実際に引き合いもあるとのこと。まずは農業分野における機能強化を目指したうえで、他分野への展開を検討していく方針です。

一方、継続的な課題としては、モータ制御や機能精度の向上を挙げています。段差を乗り越えるための四輪駆動仕様ですが、最大荷重で稼働するとモータへの負荷が大きく、解消しようとすると全体の馬力が低下してしまいます。さらに、自動走行機能を支えるGNSSについても、圃場周辺に高圧線が設置されている場合や、太陽フレアによる通信障害などで精度が維持できないことも。「こういった問題解決のために、コンパクトボックス型コントローラが有する機能やNECグループのリソースを使って何ができるのか、という提案を引き続きお願いしたい。ゆくゆくは、モータ制御や衛星に依存しない自動走行ができるようになればと思っています」(貫井氏)。安全性の高いハード・ソフトウェアの提供を通じて、今後も伴走者としての役割に期待を寄せています。

お客様プロフィール

株式会社DONKEY様

所在地 〒252-0131
神奈川県相模原市緑区西橋本5-4-21
さがみはら産業創造センターSIC-1 1103
設立 2020年
事業内容 作業支援を行う小型の多機能型農業ロボットの開発
URL new windowhttps://www.donkey.co.jp/


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(2024年11月18日)

  • AMD、Zynq、UltraScale+ はAdvanced Micro Devices, Inc.の登録商標または商標です。
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